第46章 敵の敵は味方
誰にでも柔らかな補佐官を演じるのは正直面倒。でも今はあの女を貶す準備をしてると思えば我慢もできる。
「急ぎの分ですが、中央から予算について差し戻しがきています」
「そうか。毎度のことだが予算の確保できなくては壁外調査に影響してくるな……」
「エルヴィン、入るぞ」
ノックも返事もないのにそのまま入ってきたリヴァイにエルヴィンは態とらしくこめかみを揉むがそんなことはリヴァイにとってはどうでもいい。
「そろそろ壁外に向けての訓練内容に纏めた、ミケにも伝えてある」
手元に差し出された書面をスッと目を通してから一部の確認と変更可能点を詰めている。
邪魔にならないよう音を立てずに彼らに出す紅茶の準備を進める。
(あの様子だと予算のために茶会か夜会に出ることになりそうね。どうしようかしら)
「おや、エリーじゃないか!うん?お茶の用意してるということは……団長室に行ってくる!!」
(お茶は三人分ね)
黙ってお茶の追加を用意しながら、次の休みはいつだったか?と考えを巡らせていた。
そろそろ痛い目にあって再起不能になって欲しい。表側は従順にしながらもティアナの絶望、苦しみ、悲しみ、負の感情を表情を想像して口角を上げた。
※※※
「まあ、中央からは予算案の見直しがきているんだが、どうしたものかな」
「それを考えるのはお前の仕事だろうが。言っとくがティアナは巻き込むなよ」
「そうは言っても彼女も兵団の一員だ。必要ならお前の許可は取らない」
一気に冷え込んだ空間をハンジがドアを乱暴に開け放した瞬間に戻ったがリヴァイの不機嫌とエルヴィンの溜息に変わっただけだった。最も本人は気付いてもいない。
「いた!さっきミケから壁外調査の概要を聞いたけど……」
「ハンジ、予定の目処も立っていない。そしてリヴァイもそうだか入室のマナーくらいは守ってくれ」
「えっー!てっきり壁外の用意だと思ってたのに」
ぼやくハンジの脛を蹴るとおなじみの悲鳴の後に八つ当たりはやめてよ!!と騒ぐが誰も気にせずリヴァイに至ってはそのまま出て行ってしまった。
「あ~あ。どうせティアナ絡みでしょ?」
「そんなところだな」
「この兵団にはまともな男はいないもんかね」
エリーの淹れた紅茶は結局余ってしまった。