第46章 敵の敵は味方
通常業務はとっくに過ぎても仕事しているハンジとリヴァイを息抜きにと執務室に招いて貰い物のワインを開ける。
たわいのない会話をしながらエルヴィンはハンジに冷静な表情を見せる。
(おっと。団長になった。こっちが本題かな)
手に持ったグラスの中身を飲み干す。あまりいい話じゃないなら今のうちに美味しいワインを味わっておこう。
「ハンジ、お前の班で諜報に向いている人材はいるか?」
「え?突然なんなの。まぁ、いるにはいるよ」
エルヴィンはしばらく思案した後に自分の部下で友人の二人に視線で場を引き締める。
「……」
「用件をちゃんと言ってくれないと困るんだけど?」
ハンジが黙っているエルヴィンに文句を言うと同意を求めるようにリヴァイを見る。
「クソでもつまった顔しやがって。用があるならサッサと言え」
「ただの杞憂であればいいんだが、大人しすぎてな。俺にはかえって不審に思える。できれば彼女が知らない部下に様子をみて欲しい。俺のところは把握しているからな」
ハンジは黙っている。エルヴィンのいう彼女の評判は良くなっているし上官としてはうれしいはずだが、確かに急な変化ではある。自慢じゃないが、恋愛沙汰はお手上げだ。てっきり、巷でいう恋は盲目でティアナに構ってるよりも恋人の存在で丸くなったもんだと感心していたくらいだ。
しかし、目の前の男はそう思っていない。なら返事は一つ。
「OK。貴方がいうなら注視するよう部下にいっておく」
ここまで事の成り行きを黙って様子をみていたリヴァイが相変わらず眉間に皺をよせている。
「気に入らないやつには何しても構わねぇ、それに近いものの見方があるだろうよ」
暴論過ぎじゃない?ハンジはエリーに同情しそうになったがリヴァイのこれまでの経験に培われた人の見る目は確かだ、エルヴィンだってそうだ。その二人が揃って警戒すべきというなら説明なんて必要ない。
「下世話だけど彼女か恋人と二人っきりな場所に行ったら?」
密談するなら誰にも邪魔されない、むしろ邪魔するほうか無粋な場所を選ぶ。
「踏み込むことはしなくてもいい。だが相手と別れた後、その相手がどこへ向かうかできる限り探ってほしい」
「俺が吐かせた方が早い」
いや、一番駄目だろ。 ハンジは突っ込みをのみこんだ。