第46章 敵の敵は味方
最初は手紙での接触。
何度かやり取りして、お互いに腹を探りあう。
もちろん相手も自分も直接的な言い回しではなく、それでいて肝心なことは伝わるようにしている。
もし盗み読まれたとしても気づかれることはない。
だって恋人から恋人に宛てた手紙ですもの。
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以前は休みでも兵団内で過ごすことが多かったけど、今はそうじゃない。
手紙と休みには必ず会う人がいる。
休日には必ずそれなりの格好で外出していれば、私に”恋人”がいるらしいと話は自然に広まっていく。
「いっやー!うちの美人さんがどこぞの男に取られたーー!」ってちょっとした話題になってるよ。
相変わらず団長室のソファで寛いでいるハンジ分隊長に苦笑いしながらお茶をだす。
この人が来ると仕事の効率が格段に悪くなる。
「そうなのか?」
いつもならハンジさんの話は半分以上、流している団長も手を止めて興味を示している。
部下の恋愛話はほぼどうでもいいとペンを走らせ適当な時間にハンジさんを追い出す筈なのに。
「実は町に買い物にいった時に見初められたらしくて。私は兵士ですから、何度かお断りしてたんですけどとてもいい人だ、と気付きまして。良いお付き合いをしてます。」
なるほどねー!と言うハンジさんとほぉ。出会いは何処にあるか、わからないね。と微笑む団長。
その様子に不審な点はなさそうで上手く誤魔化せたのか、根掘り葉掘り聞こうとするハンジさんの暴走を止めてくれた。念の為もう少し恋人らしく見せつけるように振る舞って僅かな疑念を抱かないようにしよう。
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「そう。もっとそれっぽく見せて。」
「わかった、しかし話を聞く限り疑ってるとは思えないがお前の言うとおりに"恋人"になりきって腕でも組んで宿にでも入るか?」
ニンマリと笑う男の顔は端から見れば恋人に優しい顔に見えるだろう。
実際には単なる協力者で情報を求めているだけの色気もない関係だけど。
「今日はダメね。外泊許可は取ってきてないわ。」
「不自由なもんだね。一番話すにはもってこいな場所なんどけどね。」
兵士でもない男には規律なんてわからないしわかりたくもないだろう。
「まぁ、あの人も慎重なところがあるからね。正確な情報を欲しがってるから次は外泊できるようにしておきなよ?」
こくりと頷いた。