第46章 敵の敵は味方
「おい。あの女を野放ししていいと誰が言った?」
エリーと入れ違いにリヴァイはエルヴィンに詰め寄った。
不快感を顕にしているリヴァイにエルヴィンはリヴァイ曰く胡散臭いと言われる笑みを深くした。
「企みがありそうなのは分かってるよ。だからこそほんの少しだけ自由にさせているだけだ」
腕組みをしながらリヴァイは眉間の皺が深くなる。
「泳がせておいてティアナに手ぇ出しやがったらてめえもタダじゃ置かねえ、覚えとけ」
凄んで出ていくリヴァイの背を見送りエルヴィンはエリーにつけた諜報員の第一報を待った。
※※※
しばらくヒステリックなエリーが現れないことに事務の皆は訝しげにしながらも淡々と業務をしていた。
最近はほぼ毎日なんやかんや言ったきたのに…と休憩時の話題になっている。
耳ざとい者もさっぱりわからないらしい。
出張なのか、異動なのか状況は知らなくてもホッとしているのがわかる。
無茶ぶりされない分、心労と残業は減り仕事に集中できる。
そんな日々が続き、左遷されただの退団しただの噂はいくつも沸いてくる。
でも。ティアナは日が経つにつれ嫌な気分になった。
人との関わり方はどうあれ仕事に妥協はせず有能なのは間違いない。どうしてエルヴィン団長は不在を許しているのか?
リヴァイとのささやかな逢瀬でそれとなく話題にしてみるが興味ないのか、「そんなの俺が知るか」と一言で返された。
それ以上は聞けずにいると不意にリヴァイの切れ長の瞳が迫ってくる。
「んっ」
何度か啄み、角度をかえて口づけると久々の甘い空気が二人を包む。
「口を開けろ」
おずおずと開いた唇を食みながらリヴァイの舌が遠慮なくティアナの舌を捕らえ、そのまま互いの粘膜を絡み合わせる。
貪欲なリヴァイの舌はティアナを翻弄し、酸素でさえ与えてくれない。
息苦しさにリヴァイの胸をトントンと叩くとようやく離れた。
息遣いが届く距離のままリヴァイはほんの少し口角を上げる。
「いつも言ってるだろ、ちゃんと鼻で息しろって」
「だって突然で!」
ニヤリとした意地悪な表情でさえ目を奪われてしまう。
「なら、できるまで練習しないとな」
「あ、あの明日も仕事だし、、」
「んなもん、忘れてろ」
このまま流されてしまいそうな、流されてもいいような気分に水を差すノックが聞こえた。