第45章 独りじゃない
「あっ、すみません!!」
「すみませんってそもそも人の話を聞いてないじゃない!」
確かに目の前の仕事に気を取られて気づかなかった。
これは確かに私が悪い。謝るしかない。
「いつも思うけど少し幹部の皆さんに気にかけてもらっているからっていい気になって。媚売るだけならさっさと退団して。周りに迷惑だわ。泣きつくしかできないくせに」
あからさまな嫌悪感と小馬鹿にする言葉が続く。
私は聖人君子じゃない、彼女の言い分には以前から正直苛立ってる。顔を合わせたくない。
ちゃんと話を聞いてなかったのは悪いと思うけど、彼女がヒステリックに喚けば喚くほど周りのモチベーションは確実に下がっているのも事実。
深呼吸し、とにかく謝罪して早く出て行ってもらおう。
「目障りなのよ、あなた。仕事もできない、使えな 」
「そこまでにしてもらえますか、補佐官殿」
続く罵声に被せ室長がエリーさんに意見した。
初め自分に言われていると思ってなかったエリーさんの声は止まった。
だけど自分に言われたのだ。と気づくと今度は室長に噛みつく。
「そもそもは部下の躾がなってないあなたの責任よ、私はそれを指摘しているだけ」
「いいえ、補佐官殿。あなたの態度は職権乱用以外の何物でもない。ここにきて鬱憤ばらしをするのも、うちの部下を貶めるのもやめて頂きたい。私たちはあなたのサンドバッグではないのですよ。そもそも書類仕事しかできないと日頃から馬鹿にしているがそれがなければ組織として回らない。わからないのであれば即刻出て行ってください」
今まで言い返さなかった室長からの言葉に真っ赤になってワナワナと怒りで震えている。
どうしよう、こんな大事になるなんて。そもそも始まりは聞いてなかった私が悪いのに…うろたえる私をよそにエリーさんと室長は向かいあって火花を散らしている。
「いいわ、ここの責任者であるあなたが怠慢を許しているという報告させてもらうわね」
エリーさんはあくまで強気に言うと室長はエリーさんから目を逸らさずに呑気な声をだした。
「お~い。今の発言全部記録できた?」
「バッチリですよ~」
「は?」ニコニコと穏やかな笑顔でエリーさんをおいていく。
「それと、念の為いつもの飾らない補佐官殿を見て頂く証人もいます」
バッと周りを見渡すがだれが証人なのかわからないらしい、ついでに私もわからない。
