第45章 独りじゃない
普段通りに仕事をしていると目の前に影がティアナを覆った。
「この書類の作成担当はあなたよね」
「はい。私が作成しました」
書類の最後には作成者のサインが入っているのでわざわざ確認する必要もない。いつもよりも剣のある態度でエリーは続ける。
「ここと、この部分、それに大切な事柄もミスがあるわ。ちゃんとチェックしてるの?それともいい加減な仕事しているの」
仕事には妥協しない主義だ。もちろんチェックは行っているし、依頼通りに作成もしているが反論する暇すらなく、エリーの追撃は止まらない。
「そもそも、不祥事ばかり起こして部署移動ばかりしてるあなたには、ここを含めて向いてないわ。私個人としては退団して市井で平和に暮らすのが向いていると思うわ」
きつい言葉を投げつけられ流石に上司が庇おうと席を立つも言いたいことを言ってすっきりしたのか、そのまま出ていった。
「今日は一段と意地悪く八つ当たりしていったな」
「そもそも、普段からダブルチェックしてるしいい加減にしてほしいわね。それにこれまでの事なんて関係ないにも程があるでしょうよ」
レイモンドとカレンをはじめとしてエリーの態度に腹が立っている。
「ま。こんな時もあるさ、あまり気にするな」
笑顔でやり過ごすも心のうちではやり切れない思いだった。
場の空気が重くなってしまったことで臨時休憩時間はいつもより多めにとられた。
ティアナは曖昧な笑顔を作るしかなかった。ディアナの件でも頭が痛いというのにエリーの機嫌まで面倒見れない。というのが本音ではあるがこれも仕事の一部と割り切るしかなかった。
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「お待たせしました。資料に不手際があり、再作成分がこちらになります」
「ありがとう」
礼はいうがエルヴィンの元には事務担当者からの苦情も届いており、それはティアナに集中していることも報告されていた。
仕事に私情を持ち込むのは論外だが生理的に受け付けない。という場合もある。それならで離すことで解決する簡単なことだが明らかにエリーは私情込みのケースと容易に想像できた。
ただでさえティアナに負担がかかっている現状でこれ以上の負担は酷だ。
しかしティアナを部署移動をさせるとますますエリーの不満も溜まり良い結果になるとは思えない。
「エ~ルヴィン!」
能天気な声が団長室に響いた。
