第44章 新しい仕事と出会いたくない出会い
エリーにねぎらいの言葉をかけている団長の顔をしたエルヴィンを問い詰めたいしティアナの元にも早く行きたいのを堪え、リヴァイは夜会の後いつも通りに振る舞っていた。
エリーが団長室からでて、十分な時間をおいてからエルヴィンにまっすぐな視線を向けた。聡いこの男はそれだけで何を言いたいか理解するだろう。それでも苛立ちが勝った。
「どういうことだ。散々危険はない、安心して楽しめばいい。お前の言い分は見事に外れたようだが言いたいことはあるか」
ポケットからメモを取り出し、エルヴィンに渡す。
場の空気を読んだハンジは成り行きを見ている。
メモに目を落としたエルヴィンは「なんとも言えないな」と言い訳すらしない。胸倉を掴んで怒鳴ってしまいたい。
次の言葉を待つ。
「今回はあの歌姫が来る予定はなかった。来ると知っていたならティアナを参加させない。一番驚いているのは侯爵達だろうな」
「え、侯爵ってティアナの後見人の?てか状況が読めないんだけど」
「お前は黙ってろ、で。あの女はこないはずなのに実際来た。あの女は慈善事業するようなタマじゃねぇだろ」
「なぜ彼女がいたのかわからない。知る手段もこちらにはないが。ティアナの友人からの連絡を待つしかないな」
「お得意の博打か。エルヴィン」
「そうだ。偶然かもしれないし、そうじゃないかもしれない。我々にできるのはティアナをできるだけ守るだけだ」
「できる、できないじゃねぇ、やるんだよ」
空気と化しているハンジを置いてけぼりにリヴァイは出ていった。険悪は雰囲気は消えたが疑問だけがその場に残った。
「エルヴィン、黙って聞いてたけど。最初から説明してくれるかな?」
普段のハンジからは想像できない目はエルヴィンに誤魔化しは通用しないと圧力をもっていた。
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扉をノックしても返事がない。
眠っているならまだマシだがティアナは眠りたくても眠れないはずだ。ノブを回してみるとカチャリと開く。
不用心さに怒るよりもおかげで部屋に入れたことに安堵した。
そう広くない部屋のベッドにティアナは腕を目に当てていた。
泣いているのか?鳴き声も嗚咽も聞こえない。
「ティアナ」
「……」
「ティアナ」
ゆっくりとベッドから身を起こしたティアナは凛とした眼差しでリヴァイを見た。