第44章 新しい仕事と出会いたくない出会い
ブレイクタイムになって、お茶や軽食をつまむなかレイモンドさんの首をコキコキ鳴らす仕草がリヴァイを思い出させる。
「あ~、もうさ直接ここに来るんじゃなくて補佐官専用の担当者と部屋用意すればいいのに」
「カレン、思い切りよくすぐに口に出さない」
「だって、馬鹿にされてんのが駄々洩れよ?!こっちが動かないと困るのに。……ストする?」
「やめろ、本気で考えちゃうだろが」
「ね、ティアナ!いい考えだと思わない?」
苦笑いで答えるとはあっと肩を落とすカレンさんを横目にレイモンドさんは「今日も平常運転だけどさ、ティアナには毎回絡むようになってきたよな」
その話題は避けたかった。差し障りないとこだけ話しているけど、深く突っ込まれたくない。
「そうね~、見下す視線はいつもだけどティアナにはそれ以上に当たり強いよね。何があったの」
あはは、と作り笑いで以前と同じような説明をするけど、納得いかないらしい。
でもな。本当のことなんて絶対に言えない。エリーさんがわたしを嫌う理由は幾つも思い当たる。リヴァイとの関係、エルヴィン団長をはじめとする幹部組に可愛がられていること。それ以外にもいろいろ。
「なんかさ、ティアナに張り合ってる感満載なんだよね」
「どうしてでしょうねぇ。半人前なんですけど。わたしの美貌でしょうか……」
すかさずレイモンドさんは「ないわッ」と突っ込んで話題が逸れていく。
カンカン。ブレイクタイムの終了の合図がなると自分の席に戻って行く。
今日は2回エリーさんが来たから平日だけど仕事終わりに飲みに行こうと誘われるな。お酒飲むと大変なんだよな。そんなことを思いながら会議資料の複製の続きに入った。
意外にも今日はレイモンドさん達も他の人も集まる予定はないらしい。平日だしね。と明日の心配しなくてもいいと安心して、エルヴィン団長からの封筒が入ったバッグを片手に退室する人の流れに乗ってそのまま自室に続く階段を上がっていく途中でひさびさにミケさんとゲルガーさんにすれ違った。
「よお!ティアナじゃねえか!!元気かお前?」
手をあげ、声をかけてくれるゲルガーさんとは対照的に無言で背を屈め匂いを嗅いでくるミケさん。
横にずれて躱すが背の高いミケさんには通じない。
「ふ、元気そうだ」
なんで匂いでわかるんだろう……
