第43章 目の前にある過去
ハンジ、ミケの了承を得て二ファ、ナナバの手を借りてティアナの荷物をまとめ、俺の隣の部屋に運んだ。
ハンジは騒ぎながらも荷物の搬入を人一倍進め、モブリットが溜息をつきながらも手伝っている。
おかげでティアナの引越しは早めに終わり、後は女子棟の掃除だけだ。
掃除をしたくてうずうずするが、流石に女子棟には入れない為ハンジとモブリット以外で掃除をする。
「本当にありがとうございます、貴重な時間をすみません」
「気にしない、気にしない!」
日常生活に支障はないとはいえ、後遺症のあるティアナと俺だけでは時間がかかる。
ハンジは自分の執務室の整頓をこの調子でやれば人が座れるんじゃねえか?とは思うものの口には出さないでおく。
「でも、心配だなあ。リヴァイの隣って夜な夜なリヴァイが居座りそう」
「悪りいか」
「だって!女子トークできないじゃん」
「野暮だよ。ハンジ」
「ハンジさんなら突撃しそうですよね」
ナナバ達は笑いながら予想をたてるが冗談じゃねえ。
ティアナに鍵はちゃんと掛けろ。と真剣に忠告する。
午後はそれぞれの仕事に戻り、ティアナは荷解きしている。
今回の礼は、街で評判の店に行く事で決まっているが何故かミケやエルヴィンまで着いて来やがった。
「おい、お前ら全員暇なのか」
「まあ、そう言うな。息抜きは必要だろう」
ミケは無言だが、ニヤけてる。
こいつら、幹部全員で兵団を空けて問題ないと思っているのか。
「今夜はリヴァイからのお礼でしょ~!小さなことで騒ぐなよ!ティアナ、ひさびさに飲み明かそう!」
おい、ハンジ、百歩譲ってお前はいいがティアナには飲ますな。
ティアナはそれほど酒に強くない。このメンツだと不安しかない。
「いっやー!本当リヴァイの独占欲は怖いよねぇ」
強い酒をグイグイ水のように飲んでいるハンジは隙さえあればティアナのグラスが空くことがないよう酒を注ぎまくる。上司からの酒を断れないのか、二杯目を飲むころにはティアナは上気した顔は真っ赤、瞳は潤んでいる。
駄目だ。これ以上は誰であってもこの姿を見せるわけにはいかない。
「俺とティアナは先に帰る。お前らは存分に飲め」
後ろからのブーイングは聞かなかったことにして早々にティアナを連れて店を出た。