第43章 目の前にある過去
あらかじめエルヴィンは各部署にティアナの受け入れについて打診していた。彼女の希望確認は念の為だ。ここに残ると決めても、どこも受け入れが難しいなら補佐官見習いとするつもりだった。
「はい。まず退団はしません。そして部署についても選り好みするつもりはなく受け入れてくれる部署で頑張りたいと考えてます」
エルヴィン団長は組んだ両手にあごを乗せていたが何もかも見通すような碧眼でじっと見つめ返す。
「そうか、まず医療班だが受け入れはできない。君も知ってのとおり一秒がすべてを決める。今の君では務まらないとの事だ。次に技巧だが、前線を退いた者も多数在籍しているが専門知識と力仕事になる為こちらも無理だった。後は事務官だがこちらも知識が必要となるが、まずは雑用としてなら手が足りないとの事だ」
「受け入れてくださるならありがたいことです。その他のことはわたしが努力することです」
「ではそれで話を進め辞令は来週とする。その間に君の部屋の移動を進めてくれ」
部屋の移動?間抜けな顔をしていたわたしに「なんだ、聞いていないのか?」と苦笑いをしている。
「今までどおり女子棟では?」
「いや、事務官はフロアこそ違うがほとんどこの棟に事務室、私室を構えている。書類の受け渡しなど機密事項、また急ぎのものもあるからね。君にはこの週末を利用して移動してもらう」
「了解致しました」と答えると「リヴァイからの苦情も怖いからな」と笑う。
エルヴィン団長とリヴァイの間でどんなやり取りがあったのかは知らないほうがいいような気がした。
「新しい私室について詳しくはリヴァイに聞いて欲しい。話は以上だ」
立ち上がって敬礼をしてからテーブルのティーセットを片付けようとすると止められ「それよりもドアの向こうで待っている奴を引き取ってくれ」と微笑んだ。
ドアの向こう?
ノック無しでドアが開くと大層不機嫌そうなリヴァイがわたしの肩を寄せて団長室から出ていく。
去り際にエルヴィン団長に振り向き「余計なことはいうな」と低い声で一言残すと、そのまま団長室からわたしの歩調にあわせて出た。
「エルヴィンの野郎」
どうして不機嫌なのかがわからないが刺激するのは得策でない気がして黙ってついて行く。
今日は使う予定がないのかガランとした会議室の椅子に隣通しで座り、リヴァイは説明し始めた。
