第43章 目の前にある過去
話終える頃には夜は更けていて、そろそろティアナは病室に戻らねばならない。
だが、今夜は一人にするつもりはなかった。
ソファからティアナは立ち上がって、カップの片付けを始める。それをリヴァイは止めて、ティアナを座らせる。
手早くカップを片付けたリヴァイはクローゼットから部屋着をとりだし、ティアナに渡す。
「へ?何?」
「何、じゃねぇだろ。着替えがなきゃ風呂に入れないだろ」
「ん?戻ってから入るよ?」
しばし無言のリヴァイにティアナは戸惑った。
「わかった」
そういうとティアナから部屋着を取り返し、もう一度クローゼットからなにかを取り出している。
ますますリヴァイの行動がわからないままでいるとティアナの腕をとって、部屋を出て鍵をかける。
「まさかと思うけど泊まるの?」
「そのまさかだ」
「明日はお互い非番でも何でもないしリヴァイは朝早いから、」
「俺は早起きだから問題ない」
「ちょっと、ダメだよ。ちゃんと寝なきゃ明日に」
「期待してんのか。怪我人にそんなことはしねぇよ」
「そうじゃなくて!」
顔を赤くしたティアナが口調を強くするとリヴァイは口角を上げて「期待に応えてもいいが?」とティアナの反応を見る。
そんなことを言ってるうちに病室でリヴァイは自室のように振る舞う。
「ほら、早く風呂にいけ」
「確認だけど、、ここでリヴァイもお風呂入るの?」
「お前は俺が風呂に入らずにベッドに上がれると思うか」
こうなったリヴァイは引き下がらない。それに一緒にいられるのは嬉しい。
一日の疲れをシャワーで流しながら自分の過去を聞いたリヴァイの反応を思い出していた。
もともと聞き上手なリヴァイは必要最低限の質問だけで否定も肯定もしないし態度を変えることもない。それがどんなに救われることか彼はわかっているのだろうか。
ティアナがシャワーから出るとリヴァイはバスルームに入った。
以前、ティアナが話そうとしてくれた時に勝手な思い込んだ自分を殴りたくなった。
アーリヤとしてのティアナは上辺は恵まれていた。その裏では足の引っ張り合いどころか大切な仲間を守るため自分を象るすべてを捨てざるをえなかった。
(戻らせねえ)
濡れた髪の水をポタリ滴らせながらリヴァイは決めた。