第42章 選択する勇気
「ありがとう。君に感謝する」
「感謝するのは寧ろわたしではないでしょうか。いろいろとご配慮頂きありがとうございます」
ベッド上ではあるが敬礼し、その後頭を下げた。
それをゆっくり優しい手つきで頭を上げさせ、エルヴィンは満足そうな表情でティアナを見る。
「まずは体を労わって、復帰できるよう努めてくれ。今後の配属先についてもよく考えて答えがでたら、私に伝えてほしい。」
すくっと椅子から立ち上がるとエルヴィンは空のカップを持ち片付ける。恐縮していると怪我人は治すことを第一にしなさい。と言うと幾分すっきりしたように見える。
「さて、長居してしまった。リヴァイが来る前に私は退散しよう。今後について気になる点などがあれば遠慮せず相談してほしい。では私は戻ることにしよう」
ピンっと背筋を伸ばしてエルヴィンは病室から出ていった。
1人になった病室はとても静かでティアナにとっていい話である提案を噛みしめる。
エルヴィンの態度に些か疑問は残るが、それを吹き飛ばすには充分な提案だ。
どの部署であれ調査兵団にいられる。
その為には早く怪我を治して復帰しなくては。
今夜は眠れる気がしない。
静かにドアを閉めると近くの壁に凭れ掛り、腕を組んでいる睨むリヴァイと隣にハンジがいた。
エルヴィンが出てきたのを目の端で確認するとリヴァイは顎をしゃくって場所を変えようと歩いていく。その後をハンジ、エルヴィンが付いていく。
※※※
「話しは聞いての通りだ」
「あいつは納得していたか」
「俺が見る限りは納得しているようだ」
「エルヴィンから見てティアナが残る可能性はどのくらい?」
「そうだな、彼女は十中八九残ると感じた」
「そう、じゃ復帰前までに決める可能性が高いんだね」
「そういうことになる。ただ、どの部署を希望するかまではわからない。恐らく事務官か」
「…あいつが事務官を選択するとして総合事務にするのか、誰かの補佐官にするのか、お前はどう考えている」
リヴァイの様子でエルヴィンは”もし自分の補佐官”と言おうものなら阻止してくるだろうと笑みが浮かんだ。
「もし事務官としても、すぐに補佐官ができる訳じゃない。事務には事務の経験が必要だ。総合事務から始めるのが筋だろう」
憶測で考えても仕方がない。自然と部屋の主以外は出ていった。