第42章 選択する勇気
退団を迫られて当然だ。壁外に出られない兵士は足手まといでしかない。
ぐるぐると完治まで待って欲しい、でも退団しかない。の二つで揺れているとエルヴィンは君がどう思うかはわからないが。と前置きをしてからティアナの目をじっと見据えて話し出した。
「私が退団してほしくない。と言ったらどうする?」
え、は?と気の抜けた音が漏れる。
どういう意図で、言っているのかがわからない。
「今まで散々退団を言ってきたが、もし退団以外の選択肢があったとしたら、君はどうする?」
目が点になり、先程からのエルヴィンの話しが飲み込めない。
「その、それは一体??」
「つまりだ、私達は君に退団以外の選択肢を提示したい」
「それは退団せず、調査兵団で役立てることができる。ということですか?」
「そうだ。まずは君に残りたい意思があるかということ、復帰が大前提の話しなんだが、以前にもあった事務官や医療班、技巧班といった戦わずとも私達をサポートする任務はある。君の要望もできる限りは考慮するが一番は適性がある部署をと考えている」
思いがけない提案を思いがけない人が提示している。
魅力的な提案。いや、魅力的すぎる。
「どういう風の吹き回しですか」
「ああ。君が不審に思うのも仕方ない。しかし君が退団するよりも兵団で別の戦い方で兵団にいてくれるのが調査兵団にとってのメリットが多いと判断した。後は君次第だ。できるなら、早めに決断してくれるとこちらも助かる。君にとっても悪くない話だと思う」
「一つ、よろしいでしょうか。」
「なんだ」
「そこまでして下さるのは何故ですか」
「さっきも言ったが、君が調査兵団にいることのほうが退団よりメリットがあるということだ」
混乱していた。てっきり退団についての話しだと思っていたがエルヴィン団長は退団を避け、後方支援として残るほうが調査兵団にメリットがあるという。
侯爵からの資金援助だろうか。でもそれなら以前の退団を迫っていたのはなんだったのか。あれから資金援助とは別にわたしにも有用性があるということなのか。
エルヴィンからの提案に戸惑ってはいるが、考えるまでもない。
「退団は希望しません。後方支援であれ何であれ兵団に残りたいです」
そこで初めてエルヴィンは柔和な笑みを浮かべ、ティアナの頭を撫でた。