第42章 選択する勇気
ティアナの病室は兵舎から離れた場所にあるが渡り廊下で繋がっており、静かに療養できるように兵舎の奥にある。
病室に近づくと中からは明かりが漏れていて時間帯からもまだ就寝前と伺える。
エルヴィンが目くばせすると、リヴァイとハンジはその場で止まった。それを確認してから、エルヴィンはノックをして病室へ入っていく。
ドアがきっちり閉められていないのは外で待つリヴァイ達にティアナとエルヴィンの様子がわかるようにだ。
「こんな時間に急に来て悪いね」
見舞には遅い時間にティアナはキョトンとしていたが、すぐに笑顔で迎え入れ、「遅くまでお疲れ様です」と言うも居心地悪そうにした。
彼女はベッドで安静な為、見舞客(しかも団長)に飲み物をだしたくてもそれができないのだ。
そのことに気づいたエルヴィンは気にすることはない。と言って備え付けの簡易台所でお茶の用意をしている。
(団長にお見舞、しかもお茶も用意させてしまうなんて)
気後れしつつもエルヴィンは気にしていないようで紅茶の香りがフワッと漂うカップをティアナに差し出した。もう片方には自分の分を持って口に運んでいる。
「その後、具合はどうかな?」
「今の時点では実感はありませんが、痛みはだいぶなくなりました」
「そうか。それはよかった。これからもちゃんとハーミットの指示通りにして回復することに集中するといい。」
「はい」と一言を返すが、”見舞”にしてはエルヴィンからはこちらの一挙手一動を観察しているように感じられる。
紅茶を啜りながら気を紛らわせるが、会話が続かないのは気まずい。カップに目を落としていると、エルヴィンが膝に肘を置き、前触れもなく本来の用件を切り出した。
「ティアナ、君は今後のことを考えているか?」
「…今後ですか」
「そうだ、君の怪我は完治しても壁外調査には参加できない。その上での身の振り方はどう考えている」
「まだ真剣には考えてはいません。完治するまでに決めようとは思っています」
静寂が落ち、ティアナの心は徐々に乱される。
普通に考えれば、退団だろう。そもそもエルヴィン団長は執拗に退団を迫ってきた。今回は避けられない退団話しになる。
心構えはしているが、せめて完治するまでは待って欲しいのが本音だ。