第42章 選択する勇気
夕食も終わり食堂で談笑するもの、談話室で騒ぐもの、寮に戻るもの。それぞれ消灯時間までの自由時間を過ごす。
「おぉ~い、ナナバ!ハンジ!付き合え!」
「ゲルガー、もう出来上がっているのか。まぁ、私はいいけど」
「ごめんなぁ、今夜はいろいろあるんだ」
「けっ!どうせお前のいろいろは巨人のことだろうが。ま、今度は付き合えよ」
酒瓶をかざして豪快に笑いながら、周りとジョッキを交わす。
ナナバはハンジに手を振りゲルガーのもとへ行くと周りもヤンヤヤンヤと盛り上がる。
ハンジも陽気な仲間たちに「まったね~」と声をかけてから、目的の部屋へと進む。先ほど仲間に見せた表情とは全く違う、読めない顔で。
(さて、もう来てるかな。あの二人だけだと空気が凍っていそうだ)
談話室からは階も離れた団長室をノックしたものの返事は聞かずにドアを開ける。
いつもの陽気さの欠片もないハンジをエルヴィンは困ったように机上から見上げた。
「やれやれ、ノックは覚えたのに返事は待てないのか?」
「返事待っているより早いからね。ノックしただけ成長したろ?」
勝手知ったる部屋とばかりにソファに勢いよく座るハンジに呆れながら用件を尋ねるが質問に質問で返された。
「今からティアナのところに行くんじゃないの?てっきりリヴァイもここにいて暖房が必要な温度になってると思ったんだけどなぁ」
「それは気遣いありがたいな、見ての通りリヴァイはまだ来てないし、私たちが揃っていたからといってそう寒くはならない。それよりもハンジ、お前は何をしに来たんだ。そっちが気になるが?」
探るような視線をハンジに向け、エルヴィンは続ける。
「まさかと思うが、お前もティアナのところに行きたいとは言ってくれるなよ」
「残念ながら、その通りなんだ。あなたとティアナの話は邪魔しない、リヴァイのように病室の隣で静かにしているつもり」
ハンジは鋭くエルヴィンの視線を跳ね返す。
「何度も言うが邪魔だけはしてくれるなよ」
「ああ。もちろんさ」
少ししてからドアが開きリヴァイがハンジに三白眼を向けたがハンジは気にすることもなく、いつもの口調でリヴァイに挨拶をする。
「おい、早くティアナのところに行くぞ。じゃねぇと寝ちまう」
三人は団長室から離れた病室へそれぞれの歩調で向かった。