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君がそこにいるならば【進撃の巨人/リヴァイ】

第42章 選択する勇気



終わりが見えない書類の山をみてエルヴィンは嘆息する。

主に急ぎのものは捕らえた巨人についてだ。
手練がついているとはいえ壁内に巨人を留めている現在、ほぼ全方位から非難を浴びているが調査兵団にとってハンジの研究次第で巨人の謎の一端に触れ、調査兵団の意義に一役買うのなら、これからの壁外調査、及び領土の拡大にも役立つ。
それとは別にどこまでも自分たちは安全と疑う事を知らない有力者たちは興味本位で巨人の話を聞きたがる。

引き出しから招待状の封筒を取り上げる。
招待者は団長の俺と今や人類最強の二つ名を持つリヴァイ、研究の第一人者のハンジ。

夜会での出来が良ければ多額の援助が期待できる。
団長としてそろばんを弾いてもいい機会だ。

そこまで考えて急に気分が落ちていく。
夜会の件はまだ先で今悩むことはない。
いつも通り報告し、いくらかの批判を受け、そして彼らを気分よくさせるだけだ。
それらよりもエルヴィンの目の前の懸念はティアナのことだ。

これから数時間も経てば俺は彼女に選択肢を告げる。
その結果がどうあれ手を尽くすが、退団を迫っていた時とは事情が変わってきた。
彼女を亡き者にしたい誰かがいる。隙を与えれば必ず彼女に接触し危害を加えるだろう。
そうさせないためには通常は退団となるケースだが、どんな形でも兵団本部に残った方がいい。可能性は薄いが万が一拒否された場合、説得する必要がある。考えを巡らせるが今回の提案を彼女が断ることはまず、ない。
エルヴィンの中で考えが落ち着くと意識を切り替えて目の前の仕事に戻った。




ペトラさんが持ってきてくれた五線譜に音符を乗せていく。
いつもより音を綴るのが遅いのは自分の置かれた心の状況が影響している。
でも人をイメージしてみると曲が作れるかもと思いついた。

まずはリヴァイが浮かんで音を五線譜に記していく。
ティアナを惹き付ける心の中にいるリヴァイを。
奏でるのは弦楽器。これは決めた。
でもなかなか音がおりてこない。
唸りながら頭の中で音を曲にしてみてもなにか違う。
いつもなら、もっとスムーズに音を繋いでいけるのに。
こんな時は無理に音を繋いでも良いものはできない。


道具を片付け終えたタイミングで医療班員が配膳にきた。
ありがとうございます。と礼を言ってから運ばれた食事にゆっくりと手をつけた。

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