第42章 選択する勇気
ハンジがあまり俺の仕事とは関わりない話しを続け、時間の無駄だと、いい加減腹が立ってきた頃を見計らったように、巨人とも違う話しをしてきた。
「まあ、かわいい巨人ちゃんについてはこのくらいにして。エルヴィンから中央へ報告に行くって件とちょっと後になるけど夜会についてとか聞いてる?」
「聞いてねぇな」
「そっか」
ニマニマとしたハンジの狙いがわからねぇ。
「リヴァイ兵長。そろそろ私は…」
夜会と聞いてか、エリーはモブリットを見て退室する様子をみせる。頷くとモブリットとともに出ていった。
確実にいないことを図るように時間を置いてから本当に話したかっただろう話しを始めた。
「あのさ、エルヴィンからの提案にティアナはどうすると思う?」
俺にわかるはずがない先を聞いてどうするつもりなのか。どの選択をしても確かなのは俺はティアナを手放す気はない。
それはハンジもエルヴィンもなんならミケ達も知っているだろう。それでも俺に聞いてくるのはなにかあるはずだ。
「あなたの補佐官、本当に優秀だよね。気は利くし笑顔で無理も聞いてくれるし、さ」
含みをもたせた言い方にうんざりして言いたいことははっきり言え。と迫るもハンジはペースを崩さない。
「もし、ティアナが調査兵団に残るとして、だ。どこが一番安心できて安全なんだろう。私はあなたのそばじゃないかと思う」
無言で先を促すとすっかり冷めた紅茶を飲み、一息つけ続ける。
「そうなると事務官、が最適解だろうけどあなたには既に優秀な補佐官がいる。なら誰か他の人の補佐官になる可能性も捨てられないよね。私にはモブリットがいる。ミケにだってナナバがいる。消去法でいけばエルヴィンが有力だね」
それは俺も考え危惧している。エルヴィンの傍におきたくねぇ。
「あなたもそうだけどエルヴィンだってティアナを欲しがってる。彼女がどんな答えを出すにしてもエルヴィンは援助を惜しまないだろうね。なんたってティアナの保護者に近い人に任せられてるのはエルヴィンだ」
ハッとした。こいつもエルヴィンの気持ちに気付いている。そしてティアナの保護者?
ハンジが言う胸糞悪い話が腹の底の黒いドロドロとしたものを増やしていく。俺の知らないティアナの事情もあいつは知っている。俺の知らないティアナを。