第42章 選択する勇気
「遅くなって申し訳ありません」
謝罪するエリーにご苦労だった。と労う。
ハンジのところに行く時点で必ず時間はかかる。
特に書類関係は訂正部分をわかりやすくしても、その訂正に必要な資料をどっかに放ってしまい、それを探すという不毛な時間がかかるからだ。
ハンジには口を酸っぱく言っても、体に覚えさせようとしても無駄なことは俺がよく知っている。
だからエリーの過失ではない、むしろ被害者だろう。
謝ることはない、そもそも期限切れで持ってきたハンジが悪い。とエリーに伝えるとホッとしたようだ。席に着くとさっきよりも早く書類を捌いていく。
「兵長、モブリットです」
ノックとともに聞こえてきたのは調査兵団一ハンジの被害を被っている人間だ。
エリーがドアを開けると神妙な表情で入室する。
「先ほどの書類申し訳ありませんでした」
そう考えてもモブリットに非はないのだが、ハンジの仕事について管理出来ていなかったとのこと。
この生真面目さをハンジに半分あれば、おそらく書類仕事で悩まされることは少なくなるだろう。と思うがこればかりは仕方ない。もちろんモブリットには一切の非はない。
顔色の悪いモブリットに苦労が絶えないなと思いながら言葉をかかける。
「モブリット、お前が謝る必要はない。むしろ上官であるハンジ自身が自分で管理すべきことだ。ハンジにはあとで俺は話しておく」
嬉しさと、諦めとが入り混じった複雑な表情で礼を言って執務室から出ていった。
その一部始終をみていたエリーは「紅茶差し上げるのを忘れてました」と苦笑いで執務室のドアを見た。
エリーが書類についてハンジの元を訪れた時になにごとかあったのかもしれない。
「リヴァイ兵長どうぞ」
ハンジもモブリットも忘れて仕事に没頭しているとコトリとソファにティーセットが用意されていた。
「今日と明日の分もある程度は目途がついてますし、たまにはこちらでゆっくりとされるのもよろしいかと」
確かに今日はだいぶ仕事も進み、ゆとりがある。
椅子から立ち上がろうと腰を上げた時だった。
「リッヴァ~イ!!今回はごめんねぇぇ」
緊張感もなんなら謝罪の意思も感じられないハンジがモブリットに止められながらも勝手に入室してきた。