第41章 壁外調査と捕獲作戦
どこか、虚ろな目をしているハーミットになるべく自然に声をかけ、一緒していいか?と断りを入れる。
こっちに戻ってきたようなハーミットは構わんよといつもの様子に戻っていた。
ハーミットは酒を飲んでいたようで、俺にもグラスを手渡し酒を注ぐ。
「驚くことじゃないのかも知れないが、ここで飲んでるのは初めて見るな」
「ああ、そうだろうな。ところでお前さんは無鉄砲な患者のところにか?」
「ああ。その前に話しておきたくてな。ティアナを助けてくれて感謝している。まだ治療は必要だと思うが見捨てないでやってほしい」
「そんなこと言われなくても目の前に患者がいれば対応するのは当たり前だ。お前さんに言われなくても少々やんちゃでもちゃんと面倒は診る」
「そうか」
「そうだ、医療班なめんな」
「これは悪かった」
グイっとゲルガーがいたら喜びそうな程いい飲みっぷりだ。
俺が注ぐとあんがとよ。と言って今度はグラスをカチンっと合わせて、お互いに飲む。
そのまま飲んでは注ぎをしていると俺より飲んでいるはずのハーミットから、もうお前さんは飲むな。と突然言われた。
ティアナのところにはもう少ししてからでも問題はないはずだが?と思っていると「男女が二人、個室にいるんだ。ちょっとくらいはイチャつくだろ、患者に間接的にでもアルコールの摂取は控えてほしいからな」
今更な気がしてハーミットに訊ねる。
「そういうあんたは結構飲んでいるんじゃねえのか」
「はっ、たまには飲みたくなるんだよ、人間だからな。それにここに来るのも久しぶりだ」
「そいつは邪魔して悪かった」
「構わないと言ったろ、一人も厭きてきたしな。そろそろお開きにするか」
二つのグラスを片付けていると背後から、「すまねえな、俺は先に戻る」と持参していたボトルを手に去っていった。
飄々としているのはいつもと同じだが、今夜はどこか心ここにあらずといった雰囲気を出していた。
調査兵団に所属していれば誰だってそんな夜を幾つも抱えている。
良かれと思ったが、せっかくの時間を台無しにしてしまったかも知れない。
過ぎた時間を思うが取り戻せはしないし、おそらく飲みなおしているだろうハーミットがいい夢を見れるといいと何となく、思った。