第41章 壁外調査と捕獲作戦
「エルヴィン、二人だけにして大丈夫なの?」
殴られた頬は赤く腫れ始め冷えたタオルを当てているが気休めでしかないだろう。
「むしろ、二人のほうがいいだろう」
「お前も酷なことをする」
団長室に集まったハンジ、ミケは初めて仲間を失った時のリヴァイを彷彿させる様子に懸念を隠せない。
「ああ、俺は悪魔だからな」
自虐な笑みを浮かべるエルヴィンは団長ではなく、懊悩する人間だった。
「そんな顔するくらいならどうして前線に配置したのさ」
「……」
「言えないってか。難儀だね。あなたも」
「ハンジ。ティアナを頼むぞ」
「わかってるよ。リヴァイの為にもあなたの為にも、ね」
「俺はまだ準備があるから戻るぞ」
「ミケ、準備終わってなかったの!?」
「準備中だったんだ」
「じゃ、私たちはもう行くよ。エルヴィン」
エルヴィンは返事せず、出ていく二人を見送った。
※※※
「エルヴィン、入るぞ」
いつもより固い声のリヴァイがティアナを連れて団長室に入室した
リヴァイはドアに凭れ掛り、ティアナはエルヴィンの前で敬礼をしている。直れのサインを出すと敬礼をといたティアナはまるで当たり前のように話し始めた。
「ティアナ・ディーツ、前線への任、了解しました」
エルヴィンは驚いた表情を一瞬だけみせたが、すぐに団長としての顔に戻り、ティアナとリヴァイの様子を注意深く見た。
二人とも落ち着いており、自分の本分を全うする兵士の顔そのものだった。
「そうか。明日は早い。もう休むといい」
「ああ、そうさせてもらう」
「それでは失礼致します」
退室しようとするリヴァイは1度振り向いてエルヴィンを見据え
「謝ったりしねえ。謝罪も聞かねえからな」
鋭い視線でそう言ってドアを静かに閉めた。
「まったく、敵わないな」
誰にも聞こえないような声で一人の部屋で瞳を伏せた。
壁外調査前日の食事はいつもと同じだ。
「明日は私の指示は必ず守って離れないでくれよ」
「ハンジさんが巨人に興奮しなければちゃんとしますよ」
「だ、そうだ。ハンジ」
ピリピリしている兵士たちとは反対にハンジ、ティアナ、リヴァイはいつもと変わらない態度で食事を摂っている。
どんなに願っても明日は必ず訪れるのだから。