第41章 壁外調査と捕獲作戦
イルゼ・ラングナーの残した記録は想像をはるかに超えていた。
そして勇敢で最期まで諦めない調査兵の姿があった。
まず、団長らがイルゼの生きた証を確認し、箝口令を命じられた数人にその記録の閲覧を許可した。
意味のある言葉を発し、死体を悼むように祀ってそこから離れようとしなかったこと。
ただの奇行種では考えられない行動。
まるで人を大切にしているような巨人。
それでもイルゼを殺したのはその巨人だ。
あれからすぐにハンジさんから記録の移しを頼まれたが理解不能は解消されない。
イルゼの遺体と遺品は両親の元へと帰る。
最期の手帳だけは機密として兵団で厳重に管理されることになっている。
オルオへのハンジさんの行動は両者に蟠りが残りそうだな、と思っていたがリヴァイがそれとなくフォローをいれたらしくオルオもハンジさんも気まずくなることはないようだった。
※※※
イルゼの記録が決定打になったのか、犠牲者が少なかったからか前回の壁外調査から間を置かずに次の壁外調査の予定が決まった。
あれからハンジさんはずっとイルゼの記録とこれまでの調査内容を調べ続けている。いくらモブリットさんが食事を持ってきても見向きもせず、寝る間も惜しんで確実に捕獲できるよう、これまで以上に捕獲装置開発に夢中になっている。
「ハンジさん、心配だな。壁外調査の前に倒れちゃいそう」
「誰の言うことも聞かないんだ。せめて睡眠だけでもとってくれたら…」
ハンジ班のみんなも忙しくしているがハンジさんの体が持たないと悩んでいた。
「モブリット、少しいいか」
エルヴィン団長が来ているのも今のハンジさんは気づかない。
「分隊長、少し休憩とりましよう」
「モブリット、気持ちはありがたいけど今はそれどころじゃないんだ。わかるだろ」
「分かりました。眠気覚ましの飲み物です」
ゴクリゴクリと一気に飲み干してカップをモブリットさんに返す。
暫くすると睡眠薬が効いてきたのか、ブンブンと頭を振ってなんとか眠気を飛ばそうとしている。
まぶたも重くなったように目を閉じてはハッと目を開く。
それでも無理をしてきた分、効き目は出てきている。
「時間が…なんでこんなに眠…」
机に頭を打つ前にモブリットさんが支え、深い睡眠に入ったらしいハンジさんを抱えて簡易ベッドに静かに降ろした。
