第40章 ※特別休暇※
「適当に掛けてろ」
一般兵よりは多少広い間取りの部屋に誰かを入れたのは初めてだ。偶に酔っぱらったハンジが騒いで入り込もうとするが無視を決め込み、隔たりを守る鍵とドアに感謝する。が、うるさいことには変わりない。暫く我慢するが限界というものがある。黙らせる為にバッと開けドアをぶつけて追い出す。「ノリ悪い、私に冷たい」と相手をしてくれる誰かの元を探してフラフラと立ち去っていく。
いつもは一人で仮眠を取るくらいの部屋にティアナがいる。普段の俺なら喜ぶが今夜は別だ。
紅茶をローテーブルに置いて一息ついたところで聞き出したいことに触れる。
「エルヴィンと何話してたのか、全部聞かせろ」
戸惑うティアナはもう終わったはずの話に目をぱちくりしているが逃がすつもりはない。
「だから、帰還報告のあとに話し相手になってほしいて言われて、」
「その時の話を一言一句聞いてる」
「んー、何か困ったことはないか?とかハンジは無理させてないか?とか、医療班に移動する気はないか?とか。本当に全部言うの?」
当たり前だ。あのエルヴィンが意味無くティアナを留めて話す訳がない。
俺の表情でティアナは続きを話す。
「あとは社交界で上手く立ち回る方法とかできれば今後も差し障りがない程度に参加して欲しいとか。」
誰が参加させるか。あの夜会でも豚共が獲物を見るような隙あらば欲を満たそうとしているのを我慢し続けるのはごめんだ。
あいつのことだ。本題は夜会や下らない社交とやらに引っ張り出したいだけだ。そうはさせねぇ。
「いいか、情報として話すのは構わない。だが、参加するのは断れ。なんなら俺が直接話をつける」
「頼まれても参加はしないよ。いくら団長でもね」
それを聞いてほんの少しだけ安心するがエルヴィンのことだ。それこそ手段は選ばないだろう。釘を刺しとくに越したことはない。
「いいか、できるだけあいつとは二人きりにはなるな、あいつだけじゃねぇ。野郎ども全員だ」
クスクスと人の気もしらねぇで「それはちょっと無理ないかなぁ。兵団は男の人が多いし」
「いいから、二人になるような隙は見せるな」
「もしかして、焼きもち?」
「悪いか」
それを聞いて優しい笑みを浮かべてリヴァイ以外、わたしは見てないよ。と殺し文句を口にする。
その途端、胸のモヤモヤが飛んでいった。
