第40章 ※特別休暇※
おいしい食事の途中にトイレに行くと途中席を立ったリヴァイにムードがないなぁと、ムードを意識するリヴァイを想像してみるけどうまく思い浮かばずに一人苦笑してしまう。
「なに考えてた?」
いつの間にか席についてるリヴァイになんでもないと笑う。
「その様子だと碌なことじゃねえな」
「内緒」
「そうかよ」
お互いに軽口を交わしながら食事を終え、会計に向かうとすでに会計は済んでますと聞きリヴァイにせめて半額でも支払うと言い張る私に「ここは男をたてるところです。ありがとうだけでいいんですよ」と初老の主が笑ってる内にリヴァイは黙って歩き出している。その背中を追いかけ、お店を後にする。
前を歩くリヴァイを追い越し向かい合うように立って「ありがとう、次は私が出すんだからね」と宣言すると「できるといいな」と優しく笑う。つられて笑いながら少しぬるい風に当たりながら歩く。
まだ夜は始まったばかりで屋台や酒場に繰り出す人達が石畳の歩道をすれ違う。
さりげなく人とぶつからないように肩を引き寄せるリヴァイ。
「疲れてないか?」
「大丈夫、リヴァイこそ疲れてない?」
「そんな柔じゃねえよ」
いつも無愛想で粗野だとハンジさん達は言うけど彼はすごく優しい。
何件か通り過ぎた酒場から賑やかな声がする。
「飲むか?」
「少しだけね」
カランカランと鈴が鳴り、お好きな席へどうぞーと陽気な声がかかる。
見渡すとテーブル席は埋まっていてカウンターに座るとリヴァイは私の分も頼んでくれた。
「ティアナは酒に弱いからな、ここで潰れちゃ俺が困る」
「みんながザルなだけだと思うんだけど?」
手にしたグラスを軽くあわせて飲むとオレンジの味でお酒とは思えない。
「ね、これ本当にお酒?オレンジジュースみたい」
子供扱いされてるなあ。そういう意味も込めて聞くとリヴァイに意地悪な顔で頬をつねられた。
「お前は隙だらけだ。ちゃんと見てねえとな」
意味がわからないのが顔に出てたのか説明してくれた。
「味はほとんどオレンジだが、入ってる酒は度数が高い。今のティアナみたいに飲んでるとすぐに潰れる。そういう酒だ」
「え、甘くて飲みやすいのにね」
「だから危ねぇんだ。男が女を酔い潰すのは下心があるってことだ。俺以外とは飲むなよ?」
そういうリヴァイが一番危険な気がした。
