第39章 ご褒美?
夕暮れ前に訓練は終了し私室のシャワーでさっぱりした後、明日の分の書類を少し片付けようと執務室のドアを開けると俺の椅子にエリーが座っていた。
ハッと立ち上がるエリーを横目にジャケットをポールハンガーにかける。
「あっ、兵長これは 」
「その椅子が気に入ったならくれてやる」
言葉を遮るとエリーは慌てて俺の腕を掴む。
「申し訳ありません!」
「別に謝れと言ってない。椅子はどうでもいい。」
「兵長!私はっ。」
「お互い確認すべきことがあるようだ」
「もうお気づきでしょう?!私は」
トントン。
「入れ」
青い顔でエリーは狼狽えているが、入室を許可する。
訪れたのはナナバで俺たちを見て目を丸くしている。
「お取り込み中かな?」
「ああ。」
「なら後で来ることにするよ」
笑顔で静かにナナバが出ていくと固まっているエリーの手から腕を外して向き合う。
躊躇うように視線をあげるエリーの顔には不安と期待が現れている。
「まずは礼を言う。実務をここまで出来るようになったのはお前のおかげだ。ありがとう。感謝する」
意外だったのか驚いた顔は次第に喜色に変わる。
「兵長の為なら私はなんだってできます!」
「俺の為?」
「だって私は兵長を誰よりもお慕いしてますから!」
距離を縮めようとするエリーから離れる。
「仕事上、お前にはだいぶ助けてもらって感謝はしている。だが仕事以外でお前とどうこうなるつもりはない。」
「っ!どうして?!あの女ですかっ?兵長に相応しくない、あんな人より」
「…言葉には気を付けろよ。」
唸るような俺の声にエリーがヒッと息を吸う。
「いいか。俺がティアナに惚れて必要としている。相応しいだのなんだの関係ねえ。わかるか」
頭を横に振るエリーにたいして強くもない俺の堪忍袋の緒がキレそうになるのを何とか堪える。
…この手の女は自分より格下とみた相手に負けるのが許せない。それが例え勝ち負けで判断できないことでも。
「一つだけ言っておく。もしどんな形でもティアナを傷つけるようなら俺は女でも男でも容赦しない」
「……」
「仕事に集中できないなら明日から来なくていい。エルヴィンには俺から言っておく。わかったら出てけ」
もう話すことはないとギロリと睨みつけフラフラとエリーは出ていった。