第38章 気乗りしない夜会
「おっ、やっと来た。で?どうだった?!」
「クソ眼鏡、うるせえ。少しは黙ってろ」
リヴァイとハンジのいつもの会話が始まりそうになると広めのソファに座るようにエルヴィンが勧めた。
リヴァイ、ハンジ、ティアナが横並びに座り、向かい側はエルヴィン、ミケ、エリーと自然に座る。
「昨夜の夜会は概ね成功と言える。感触としては兵団にも好印象だ。勿論これからの_」
「あー!もう!そんなのいいから、スポンサーになってくれそうな貴族の方々はいた?!」
じれったい話しぶりにハンジはエルヴィンの言葉を遮る。
「ハンジ、落ち着け。結論から言うとスポンサーになると言ってきた貴族はいた。」
「やったね!さすがエルヴィン!初めての顔見せで成果出すなんて!」
「ハンジ、相手をよく考えろ」
無言を貫いていたミケがここで発言したのを受けてエルヴィンが続ける。
「無償では彼らは動かない」
エルヴィンの一言に一気に表情が険しくなる。
「で?彼らは何を求めてるんだい」
「今のところは特に何も。しかし気が変わりやすい彼らを繋ぎ止め続けるのが肝心だ」
「要は貴族様のご機嫌取りをしろってことかい?」
怒りを顕にハンジは分かりきった答えをエルヴィンに投げつける。
「その通りだ。彼らの機嫌を損ねては水の泡だ」
「ふざけんな!」ハンジの握り締めた拳は震えエルヴィンとハンジが睨み合う。
「ハンジ、薄々予想はついてたろ」
リヴァイが腕を組んだままハンジを見据えて言葉を放つとハンジは悔しそうに口を噤んだ。
「……」
上官たちの険しい表情と会話にティアナはいたたまれなくなる。
補佐官であるエリーはともかく一般兵の自分がここにいる理由が分からない。
(嫌な予感がする。)
「そこでだ。ここにいる者に加え班長クラスの何人かにも積極的に資金調達の為に動いてもらう」
異論は認めないとばかりにエルヴィンが発言すると、すっかり重くなった場に耐えきれなくなったエリーがカタカタと震えながら訊ねた。
「それは、それは資金調達のためには手段を選ばない。ということでしょうか…」
「君が心配しているような事はしなくていい。安売りをすると足元を見られるからね」
エリーの方を見てエルヴィンは若干柔らかな声音で伝えた。
その答えを聞いてエリーは胸に手をあて大きく息をはいた。