第38章 気乗りしない夜会
「…何しに来た」
エリーはまだ着替えてもいないのかドレス姿のままだ。夜に男の部屋に来るのがどういう意味かは分からない訳ではないだろう。
「夜会でのお礼を…」
「いらん。単なる仕事だ。そもそも礼を言われるようなことはない。戻れ」
ピシャリとはねつけるリヴァイだが、エリーは中に招いて欲しいのかドアの前からチラリと部屋をみる。
「せめてお茶を淹れたいと思いまして…」
「飲みたきゃ自分でやる。用がそれだけなら明日に備えろ」
なかなかドアの前から動こうとしないエリーに苛立ちを隠さず冷たくあしらうが一向に怯まない。
「こういう夜には…主催者側から女性を宛てがわれることがある、と聞きました。それなら」
「おい。いい加減にしろ。俺は戻れと言っている」
縋るような表情のエリーに不機嫌を通り越して嫌悪感を隠すことなくリヴァイは突っぱねる。
「私はっ」
「くどい。何度も言わせるな」
「彼女なら…受け入れるのですか」
ここでリヴァイの堪忍袋の緒が切れた。
「お前には関係ない。優秀な補佐官が聞いて呆れる。ただのメス豚じゃねえか。俺に構うな」
冷たく軽蔑に満ちたリヴァイの態度に耐えられずエリーは逃げ出すように宛てがわれた部屋へ駆け込んだ。
折り悪く鉢合わせたティアナにエリーの憎悪に歪んだ顔が向けられる。
そのまま乱暴にドアを閉めるエリーに何となく事情を察したティアナは細く開いているリヴァイの部屋のドアに目を向けるとリヴァイが顎をしゃくって入るように促す。
「………」
「おじゃま、します」
パタンと閉められリヴァイの部屋に入ると大きな舌打ちをしながら柔らかそうなソファに乱暴に座る。
居心地が悪い雰囲気に立ち竦んでいると、ポンポンと横に座れとリヴァイは言葉なく示す。
少し遠慮しつつそばに座ると紅茶の用意をしていたのかテーブルにはティーセットが置かれていた。
「あの、紅茶を淹れるね」
一言も話さない空気に耐えられず紅茶を淹れようと立ち上がるとグイッと手を掴まれ元の位置に座らされる。
「すまない。せっかく来てくれたのに気が立っていた」
「今夜は色々ありすぎて疲れたでしょう?」
「全くだ。今は茶はいい。こっちに来い。」
隣に座るティアナの肩を抱き寄せた。