第38章 気乗りしない夜会
一方エルヴィンは持ち前の容姿と話術で彼らを魅了し、資金援助を目的に相手を選んで近づく。
その中には下卑た笑みでエリーに誘惑をするが引き攣った顔のエリーは上手くあしらえない。
エリーのカバーも行いつつ、そろそろ退散の時間だな。とタイミングを見計らう。
「伯爵、伯爵夫人。今夜のとても素晴らしい夜に感謝致します。名残惜しいですが明日の務めもありますのでー」
引き留めようとする貴族に微笑みながら、またのお誘いをと繋いで別れ、少し離れたところに二人でいるリヴァイ達にしか聞こえないように小声で戻るぞと告げ、周りを囲む貴族に媚びた言葉をかけながら煌びやかな、それでいて虚しい会場を後にした。
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兵団の馬車に乗り込んだ四人はそれぞれ疲れた様子を隠すことなく主催者が予め用意した宿へと向かう。
早く兵舎に戻りたいリヴァイは嫌悪を顕にしているが、この深夜の暗い道程では兵舎に辿り着けないと説得し、宿というには豪華な宿泊施設に着いた。
エルヴィンが手続きをしているのを柱に凭れながら見ているリヴァイは自分はこれからも腐った夜会とやらに出るのだろうと嘆息した。初めてとはいえリヴァイとエリーは疲れきっており、ティアナはかける言葉もない。
手続きを終えたエルヴィンがそれぞれの手にルームキーを手渡すと明日の予定を軽く話して部屋へ向かう。
気を回したのか、どうなのか四人の部屋は個室でルームナンバーも301,302,と続いている。
すでに荷物は運び込まれており、後は部屋で今夜の疲れを少しでも軽くするだけだ。
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解散したはいいが、髪や服にまとわりつく香水やタバコの匂いにリヴァイは我慢できず、手早く服を脱ぎ風呂場に直行する。
念入りに洗い流して清潔なバスローブをまとってもまだこびりついているようで気分が悪い。
部屋に入る前にティアナに自分の部屋に来るよう耳打ちし頷いてくれた。そろそろ来てもいいはずだ。
二人のささやかな時間の為に紅茶の準備を始める。(ムカつくことに茶器から茶葉まで上等な物だ)
控えめなノックが聞こえ、待ちかねていたリヴァイはドアの向こうを確認することなく開き、飛び込んできた体を受け止めた。
「兵長……」
弱々しく自分を呼ぶのは待ち焦がれたティアナではなく上目遣いで自分を見つめるエリーだった。
