第38章 気乗りしない夜会
挨拶まわりも一段落つき、エルヴィンはそれとなくリヴァイの方に目を向ける。思いのほか上手くやっているようだ。
できれば、少し口元を緩めて欲しいがその不足はエリーが補っているので良しとしよう。
リヴァイの視線が動き、見ればティアナに青年が話しかけている。
ダンスを申込まれているのか。
リヴァイに目を戻すと眉間のシワは深く目つきが五割増しで鋭く話していた女性もそそくさと立ち去ってしまった。
(このままだと不味いな)
「リヴァイ。」
「……あ?」
「エルヴィン団長!」
「エリー。楽しんでいるかい?あちらの夫人が君と話したいそうだ、少し行ってくるといい。」
「でも…」渋るエリーの肩を押し、この場から離す。
「彼女が気になるか。」
「当たり前だ。なんだ、あの野郎は…」
「言葉に気をつけろ。ティアナなら大丈夫だ。私たちよりも上手に振る舞える。」
「そういう問題じゃねえ」
ティアナを見ると軽やかなステップで踊っている。よく見るとリードする側の男性を逆にリードしている。あれでは男性の立場がない。
笑いそうになる口元を手で隠し、眺めていると音楽が終わり礼儀よく別れた。
「ほら、心配する必要ないだろう?」
「クソが。」
別の男性がティアナに近づこうとするのが我慢出来ないのか、足早にティアナのもとへ行ってしまった。
※※※※
「おい。」
「え、リヴァイ?どうしたの?」
「……」
「?」
言いたいことは沢山あるのに、なかなか言葉にならない。
「私、疲れちゃった。あそこで休もうよ」
黙ってティアナと人気のない廊下のソファに座り込む。
「はぁ、特別休暇は嬉しいけど、もう来ない。絶対」
リヴァイが気疲れしているのではないかと話し始めたが、どこか様子がおかしい。
「どうしたの?リヴァイ?」
「…お前が、遠い。」
「遠い?」
「俺とは違う、世界が違……」
「遠くない。世界も同じ、同じ空で生きてる。あなたのそばで私は生きてる」
黙り込むリヴァイの手にソっと手を重ねる。
いつもは少し低いリヴァイの体温はティアナの指先、掌で温まって同じ温度に変わる。
「なあ、俺と踊ってくれねえか」
ティアナの答えは決まっている。
今夜一番の笑顔をリヴァイに向けて言った。
「喜んで!」