第38章 気乗りしない夜会
次第に周りは貴族の住む地域に入り、今まで見てきた庶民の町とは趣きが違うことが一目でわかる。
リヴァイにとっては自分のことだけしか考えない豚どもが集まる場所。
兵団のボロイ建物とも比べるまでもない立派な建物が並び立つ。
資金調達の為と、見世物になる覚悟はしてきたが現実に近づくにつれて嫌気が差していた。
また、よりによってエルヴィンがティアナをエスコートすること、ティアナが自分の傍にいないことが気に食わないどころか嫉妬なのは自覚している。
笑顔であれこれと楽しそうに話しかけるエリーも鬱陶しい。
それにしてもエルヴィンには地味と評をうけたティアナの装いはリヴァイには充分であり、隣のエリーの正装に劣らない。
シンプルでティアナらしい。
彼女から俺はどう見えているのだろう。
タッパのあるエルヴィンは恐らくこういった場でも目を引く容貌だ。人目を気にするのは柄じゃないのに、誰の目も気にならない自信はあるのに、どうしてもティアナがどう思っているのか、だけは気になって仕方ない。
隣のエリーは存分に着飾り、漂う甘ったるい香りはリヴァイの好みではなく、移動中窓を開けて香りを逃がした。
初めての夜会に心浮きだっているエリーはリヴァイにいろいろと話しかけてくるが全く耳に入らない。
乗り気じゃない夜会の会場に着く前から不満だけが募るが、しつこい位にエルヴィンに言われた注意事項とやらを頭に思い出す。
自分が愛想を振りまけるはずがない。と言っても、それでも出席すること自体に意味がある。兵団の為。と言われ、無視することはリヴァイにはできなかった。次第に瀟洒な建物が見え始め、夜会会場が近いことが感じられた。
斜めのシートに座るティアナは凛としている。
一瞬目が合い、ティアナはリヴァイに小さく微笑みかけた。
今だに段々と華やかになる街を見てはエリーは興奮しきりにリヴァイに同意を求める。適当な相槌を返しているのにも気付いていない。
話したければ勝手に話させておけばいい。
それよりも兵舎では決して見れないだろうティアナをエスコートするのが自分以外の男である事実がリヴァイには腹立たしく、目の前のエルヴィンを睨んだ。