第38章 気乗りしない夜会
兵団本部を出て舗装されていない砂利道は乗り心地がいいとはいえない馬車をガタゴトとゆらす。
その度に揺られる四人。
エルヴィンはカズサの横で夜会の出席リストを再度読み込んでいる。
リヴァイはムスッとしながら景色を眺め夜会の話について少々興奮気味に話しかけているエリーの話を聞いているのかどうなのか時折あぁ。と気のない返事ばかりだ。
ティアナは息苦しい車内とエリーがリヴァイの隣で楽しそうにしている姿,ここまでの経緯に辟易しながら、これまでの出来事を思い出していた。
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「お断りします。」
簡潔に拒絶の返答を返すもののエルヴィンは想定内と驚いた様子もなく人好きのする笑顔のまま続けた。
「今回の夜会は小規模で、君の心配する必要は全くない。」
「そういうことではありません。一兵卒が夜会に出席する事自体が人目を引くには充分です。」
「ならば、君を夜会では団長補佐として紹介すれば済む。」
「それだけではないと申し上げます。私はもう夜会やシーナ、王都へは向かわないと決めています。それに適任者は他にもいるはずです。私である意味が全くありません。」
「困ったな。小規模とはいえ夜会は君が何者であれ適していると判断した。兵団としては顔を売る絶好の機会だ。資金獲得にも繋がるチャンスは逃がしたくない。」
「残念ですが私には荷が重いですし、これからこういった場へ慣れる為にも他をあたるべきです。」
「君以外に適任者は一体だれか教えてくれるかな?」
答えに窮したティアナを見逃さずエルヴィンは畳みかける。
「ティアナ、こんな風に言いたくないが団長命令として君には不本意だろうと夜会は出席してもらう。何、君が心配していることにはならないし、会いたくない方々が出席することもない。」
「夜会に行くようなドレスもアクセサリーも持ち合わせてはいません。顔を売りにいくなら他の出席者達に侮られることがあってはこれからの活動の差し障りにもなりかねません。」
無駄だろうと知りながらも苦し紛れに最後の足掻きとばかりにティアナは反抗する。
「それはこちらで用意しよう。さあ、問題はないね。」
この男は自分がどう反応するか、何を理由にするか、を知った上で命令を下している。
団長命令ではティアナにはもう、逃げ道はない。