第38章 気乗りしない夜会
コンコンと軽いノックが団長室に響き、視線がドアに集まる。
「どうぞ。」
「失礼します。」
着飾ったエリーが静々と入室した。
ドレスはどちらかといえば体のラインに沿ったAラインで色味も上品に抑えたパープル。ヘアスタイルもメイクも実家が美容室の兵士にやってもらい仕上がりは上々。
「わぉ、本当にきれいだね~!!お姫様みたいだ。」
ハンジが興奮してエリーの周りをグルグルして色んなアングルで見ている。
少し時間をおいて再度ノックがあり、エルヴィンがもう一度入室を促すと、ドアを開けた向こうにドレスを少しだけ持ち上げ腰を落とす挨拶をしてから、ティアナは入ってきた。普段の兵士としての振舞いは消え、貴族のように様になっている。
ドレスは濃いブルーのロングスリーブで髪は整える程度、メイクはナチュラルなものであった。
普段のティアナとは全く違う雰囲気にエルヴィン以外は言葉を失くした。
一拍おいて、エルヴィンはティアナを褒めながらも少し地味過ぎやしないか?と訊ねている。
それにティアナは苦々しげに「いろいろと時間がなかったものですから…」と言い訳をしているが、実際にはよく似合っていてリヴァイは自分がティアナの手を取れなくてエルヴィンがエスコートすることに腹の底からの怒りと嫉妬を覚えた。
「えっと、ティアナ…だよね??」
「はい、ハンジ班のティアナですよ。無茶振りする上司たちに困っているんですが。」
ミケが匂いを嗅ごうと近づこうとするのをリヴァイは寄るな、気持ちわりぃ。と切り捨ててから、ティアナに「お前、絶対に俺たちから離れんじゃねえぞ。。」と苦言を呈する。
夜会にでるのは慣れているし、どう振舞えばいいかはこの中で一番心得ている。心配し過ぎですよ。とリヴァイを安心させたかったのだが逆に無防備だと叱られてしまった。
「さて、我々の準備も美しい華も揃ったことだ。馬車を待たせている。早めに会場へ行こう。」
馬車に乗り込む手をエルヴィンはティアナに差出したが、リヴァイはエリーには手を貸さずにサッサと乗り込んだ。
会場へと走り出す馬車を見えなくなるまでハンジとミケは険悪な
2人をネタに兵舎に戻って行った。