第38章 気乗りしない夜会
壁外調査に向けて、避けては通れないのが資金だ。
税だけでは賄えず、気まぐれな富裕層である貴族や商人からの誘いには応じるのが常であり、今回は新団長/兵士長/分隊長と新幹部に注目が集まっていた。
夜会には正装がマナーであり、リヴァイも初めてのタキシードを誂え準備していた。
「こんな動きにくい服を好んで着るやつらの気がしれねぇな」
「まあまあ、そんな愚痴ってもどうしようもないでしょ。そこそこ似合ってるよ」
「以前は俺も行ったが体質的に無理だ。悪いが任せた」
「ミケ、お前の鼻が良いのも時には厄介だな。」
「でもさ、流石に主要新幹部組みんなが夜会に参加しちゃ兵団の管理できないからねぇ…」
エルヴィンに始まりリヴァイ、ハンジ、ミケの全員が招待されてはいたがハンジの言う通り幹部が兵団を空けるのは無理がある。尤も注目されているだろうエルヴィンとリヴァイの二人が男性お代表で出席になった。
もちろんパートナーの同伴は当たり前である。
このパートナーのことでも一悶着があった。
リヴァイのパートナーが補佐官のエリーだった為だ。
もちろんリヴァイは他を希望したが、すでに肩書きのある補佐官が同伴すると返事したこと、噂の件にしても所詮は噂であり、疾しくないのであればすぐに消えるとエルヴィンは涼し気に答えた。
「おい、エルヴィン。お前の同伴者がティアナで夜会に参加なのが未だに俺は納得いかねぇんだが。」
「それは解決済ではなかったか?夜会慣れしているのがティアナだと何度も説明したはずだ。」
「お披露目ってんならお前の同伴者はハンジで十分だろうが。」
「ハンジでは巨人話しで終わってしまうだろう。それでは資金は得られない、ティアナが最適だ。」
「なら、俺と変われ。夜会慣れしてない俺にこそ必要だろうが」
終わりの見えない論争に痺れを切らしパンパンとハンジが両手を打ち鳴らした。
「はい、はーい。そこまで!もう決まったことだし彼女たちの了解も得てるんだし、そろそろ準備も完了するころだよ。言い争ってる場合じゃないだろ。」
不機嫌を通り越しているリヴァイに上手くエスコートできるんだろうか、とミケは心配しながらエルヴィンとリヴァイを交互にみつめた。