第37章 13代団長就任と幹部任命
確かに兵士長に就き、人類最強と寒い二つ名をつけられ入団した頃とは環境がガラリとかわり時間をとる事もできなかった。
訓練している姿や食事堂、談話室で偶に見かけるくらい。
せめて視線を交わしたいのに瞳が合うと逸らされる。
机に肘をついて顔半分を覆っていると、遠慮がちなノックの後に「ティアナ・ディーツです。」と聞こえ、リヴァイはドアを急ぎ開いた。
ドアの向こうのティアナはいきなりドアを開いたリヴァイに驚いていたが、関係ない。
腕を掴んで執務室へ引き込む。
ティアナの視線を逃がさないように両手で頬を挟む。
額を合わせノーズキスを。
顔を真っ赤にしているティアナに触れたくて後頭部と腰に手を回ししっかりと抱き締める。
言いたいことも聞きたいこともあった。
それは思いがけないティアナの前では吹っ飛んだ。
「会いたかった、お前は?」
掠れて力ない声は本当に自分の声だろうか?
おずおずとティアナの腕がリヴァイの背中に回る。
「あい…たかった…でも、」
コンコンとノックが響く。サッと離れティアナは用件であっただろう書類を差し出す。
離れた距離が自分達を表しているようでティアナの不安を滲ませた言葉が気になってもう一度引き寄せたくなる。
コンコン。「兵士長?」
なんてクソなタイミングだ。リヴァイはティアナの両肩を握り耳元で囁く。「今夜、必ず行く」
瞳が潤う瞼に口付け、書類を受け取る。
少し震えた声で「それでは、失礼します。」と真っ直ぐにリヴァイを見つめ退室しようとしたところでエリーが片手になんとかトレイを乗せ入室してきた。
「あら、お疲れ様。」
返事の代わりにティアナは敬礼をした。声を出せば震えてしまう。
エリーは気にすることなく、リヴァイに「寝ていらっしゃるのかと思いました。」と穏やかな声をかけている。
「失礼しました。」ドアの前で敬礼したティアナは目を伏せドアを閉めた。
「また新しい書類ですか、今度はどちらからでしょうね」
コトリとリヴァイのデスクに置いたティーカップからフワリと柑橘系の香りが漂う。
「こちらのお菓子もどうぞ。甘さは控えめですよ。」
紅茶もお菓子もいらない。今夜会える。
どこかうわの空のリヴァイをエリーは観察していた。