第37章 13代団長就任と幹部任命
待ち人来らずの夜の中ティアナはいつものように過ごすが集中できない。
その原因も理由もはっきりしている。
忙しいそうなリヴァイ、横に付き従うエリー。
それは訓練でも一緒で会議でも執務室でも変わらずエリーはどんどんリヴァイの横に馴染んでいる。
見る度にさざ波だった不安がいまは大波になって、それが嫌でできるだけ2人の姿を避けている。
「はあ。」いつからこんなに貪欲になったんだろう。
気を抜けばそこは私の場所なの!と叫びたくなる。
でもそんなことをしたら重い女ときっと呆れられてしまう。
そろそろ壁外調査も近い。こんな乱れた心では生き残れない。
せめてストレスを発散するためにヴァイオリンを手に取り激しく早い音を作り出していく。
しばらくはここに来ないでおこう。
1人になるとどうしてもリヴァイとエリーの姿が嫌でも浮かび上がって叩きつけるような音しか紡げない。
弾き終えると片付けをしてランタンを下げ消灯よりも大分早めの時間に宿舎へ戻った。
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今夜こそはティアナに会える。
書類仕事も要領が分かってきた。やっと時間を作ることができ久しぶりにティアナの元で過ごせる。
焦る足音を抑えることもせずに近づくとランタンのほのかな灯りさえ見えず人の気配はない。
「ティアナ?」呼びかけても闇夜に吸い込まれるだけで。はっきりしているのは誰もここには居ないことだけ。
やっと会えると期待した分だけ沈む。
いや、これからいつものように穏やかな顔で来るのでは、もう戻ったんだろう。と反する思いを抱えたまま倒木に座り込む。
消灯を知らせる鐘の音が響きティアナと会えないままのモヤモヤとした気持ちを抱えたままリヴァイも重い足取りで自室へと戻った。
すれ違ってしまった2人を欠けた月だけが見ていた。
「次!」
ティアナを含めた調査兵は班ごと、違う班など色々なパターンを想定しての訓練だ。壁外へ1歩踏み出せば巨人の世界でどんな場合でも恐れずに項を削ぎ、仲間を1人でも救う。
立体機動で駆使して縦横無尽に飛び回る。
「しまったっ!」アンカーを刺した場所が悪かったのかバランスを崩した兵士が慌ててアンカーを別の場所へ飛ばすが間に合わず落下していく。
周りも助けようとするが落下速度に追いつけない。
誰もが顔を顰めた瞬間だった。