第35章 845
キースが団長を退くとなり反応は様々だった。
この状況で無責任と詰る者もいれば、次期団長として常々名前のあがるエルヴィンに期待を込める者。
無関心な者。
ただ歴代団長で戦死ではなく団長健在なままに次代への交代は初めてであった。
「次の団長はエルヴィン分隊長なのかな?」
「俺が知るわけねえ。」
「そうなんだけどね。ちょっと怖いんだ。」
「退団をか?」
「それだけじゃないけど。エルヴィン分隊長は目的の為には手段は問わない気がしてね。」
「…確かにアイツはそうだろうよ。しかし今までと俺達がやる事は変わらねえ。」
やっと、兵団内も落ち着きを見せリヴァイとの時間も取れるようになった。
本部に戻ってきた時は昨日までは何でもない普段の生活をしていた人々の死に、救えない自分の力の無さに落ち込んでは死に際の人達の声に胸が苦しくて歌うことすら出来なかった。
そんなティアナを慰めることも叱咤することもせず、リヴァイはただそばに寄り添った。
今も悔やむことは沢山ある。
でも立ち止まれない。多くの命を奪った巨人を全滅させる。時間はかかった。けど前を向く事が今はできる。
「お前はエルヴィンが苦手だと言っていたな。」
「うーん。どちらかと言えばそうかな。」
「エルヴィンが団長になろうとならなくても俺達がやる事は一つだ。」
「うふふ、リヴァイはエルヴィン分隊長を信じてるんだね。」
「気色悪いこと言うな。」
悪態を吐きながらもティアナを見る瞳は細められ、口元には薄く笑みが浮かんでいる。
そのまま横にいるティアナの顔を掬いあげるようにキスをする。
「んっ、」
何度も落とされる唇と次第に長くなるキスにティアナはまだ慣れずにいる。
ペロリとリヴァイの舌がティアナの下唇を舐める。
小さく唇を開くとリヴァイの舌がティアナの中に入ってくる。
思わず逃げる舌を絡ませて引っ張り出し深く絡めていく。角度を変え、絡められるキスは次第に水音をたて始める。
それが気持ちよくて幸せで息を吸うのをいつも忘れてしまう。
さすがに呼吸が苦しくなってリヴァイから逃れようとすると名残惜しそうに離れていく。
「もう!」
「なんだ?」
「何でもない。」
ククッと喉を鳴らして笑うリヴァイはとても格好良くてティアナは「大好き」と答えた。