第34章 再び異動と甘すぎる夜
無事、明日の準備を終わらせたハンジはティアナの姿を探すが、何処にもいない。
近くにいた兵士に訊ねるとリヴァイと一緒にいたと聞き納得した。
(なるほどね。)
兵団に来た当初は山猫のようなリヴァイがティアナと出会って少しづつ変わっていくのをハンジはこの目で見てきたし、きっかけを作ったのは自分であるとも自覚していた。
二人が近づいていくのを時には喜び、時には申し訳なさを感じていた。
(エルヴィン、ごめんよ。)
エルヴィンの気持ちも知っているのに…と思うがきっと彼はその想いは告げないだろう。
そっと胸に手を当て旧友へ謝った。
今はただ、リヴァイとティアナがお互いを支えにすることを願うばかりだ。
「班長ー!書類にミスがありました!訂正をお願いします!!」
センチメンタルに浸っていたのを壁外調査前日というのに生真面目な副官が呼ぶ声に気づかなかったことにしてみるもすぐに捕まり執務室へとズルズルと引きずられていった。
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その頃、リヴァイとティアナはのんびりとお茶を飲んでは他愛のない会話をしていた。
「リヴァイ。このお茶、ミルクに合うと思わない?」
「そんなことしたら茶の風味がわからねえだろ。」
「そうかなぁ。今度、試してみようよ。」
「お前の分だけな。」
明日のことは二人とも話さない。
話してしまうと不安が擦り寄って溢れそうになるから。
リヴァイは三度目の壁外で最強と呼ばれ始めているが、それでも心配なのはかわりない。
「そういえば、俺の好きな茶葉を選ばせちまったがティアナはどの茶葉が好きなんだ?」
遠くにいきかけてた意識を引き戻すようにリヴァイから問いかけがあり、一瞬何を聞かれたのか戸惑った。
「そうね、紅茶はなんでも好きだけど…」
「答えになってねえぞ。」
意地悪そうに口角をあげ、リヴァイは答えをあててくる。
「アールグレイ、だろ?」
「えっ、なんでわかったの?!」
「前にカフェに行った時にアールグレイを飲んでたからな。あの時の顔が語ってた。」
「分かってるなら聞かなくてもいいじゃない!」
ティアナの沈みかけてた気分を浮き上がらせたリヴァイは心の中でホッとした。
(こいつは笑顔のほうがいい。)
明日の事は触れないまま、二人は穏やかに過ごした。