第34章 再び異動と甘すぎる夜
どんなに先延ばししたくても、その日はくる。
壁外調査の前日は全員が休養日だ。
静かに過ごすもの、騒ぐもの、それぞれが明日を恐れながらも、何処か高揚した雰囲気が漂う。
壁外調査後が戦場の医療隊も備品の再確認、打ち合わせを終えると休みになる。
医療室から出ると腕を組んで壁に凭れたリヴァイがいた。
「リヴァイ、どうしたの?」
「会いに来たに決まってる。終わったか?」
「うん。」
「じゃあ、着いてこい」
どこに行くのかも答えずに進むリヴァイにティアナ黙って後を追う。
この日だけは街の店が兵団内で店を開くことが習慣となっている。
色々な店が所狭しと並ぶ中でアクセサリーなどを取り扱う店は女性兵士、男性兵士ともに人気でひしめき合っている。
リヴァイはその店を通り越し人気が無さそうな店のテントにたった。
「好きな物を選べ。」
「好きな物?」
そこは紅茶を取扱う店で、カップなども揃えている。
「紅茶はあれがお勧めだ。後カップは自分で選べ。」
「…カップ?」
「そうだが?俺が帰るまで紅茶でも飲んで待ってろ。」
プッとティアナは笑った。露店に連れられた時にてっきりアクセサリーでも渡されるのか、と心配したが当然のように帰ると言外に含んでいる贈り物に不器用さを感じていた。アクセサリーなんて買われたら断るつもりでいたので拍子抜けしたのと同時に安心した。
「じゃあ、そうね。これなんかどうかな?」
ティアナが指したのはシンプルな白いカップのセットで余計な装飾がなく上品にみえる。
すぐに店主に紅茶とティーセットを包むように頼むと差し出された包みを持ってクルリと来た道を歩いていく。
「ありがとう。」
「今日は茶でも飲んでゆっくりしたい。」
リヴァイはティアナが立ち入ったことの無いリヴァイの自室へと足を向けた。
「リヴァイ、リヴァイ!ここ男性宿舎じゃ…」
「今日は宿舎にほとんど誰もいないし管理人もいないからな、ゆっくりするにはいいだろ?」
「そういうことじゃなくて!」
「嫌か?」
戸惑っているティアナに「嫌ならいい」と不機嫌な声が聞こえる。
「嫌じゃ、ないけど。」
「なら、いい。」
リヴァイはティアナと一緒にドアの向こう側へと入った。