第33章 伝えたいこと
翌日早朝、ティアナは訓練の準備を進めながら今日のスケジュールを確認していく。
午前中いっぱいは基礎訓練。昼食後、実地訓練と一日中、訓練漬けの一日だ。一日が終わればグッタリしているはず。リヴァイと話すのは明日以降に延期しようか?
そもそもリヴァイのスケジュールは他班の為よく分からない。弱気な心がシミのように広がっていく。
「こっちは終わったよー!」
「あ、ごめん!後はこのハリボテ起こさなきゃね!」
あちこちに飛ぶ思考を抑えて今やるべき事に集中するように切り替えた。
「あー、もうムリ。疲れすぎて動きたくない」
隣の芝生に寝っ転がる二ファに同感、と答えながらふくらはぎをマッサージする。腕の筋肉もちょっと痛むが本格的に筋肉痛が襲ってくるのは確実だ。
「ねえ、大浴場の湯船に浸かって体に労わろうよ?」
二ファから魅力的な誘いに頷く。
たっぷりの訓練後のお風呂はとても気持ちいいしリラックス効果がある。明日の筋肉痛も和らげてくれるかもしれない。
「うん!行こう!」
まずは自室に戻って着替えを用意しようと立ち上がった、その時。
「おい。」
聞き覚えのある低音。
思わず振り返ると相変わらず感情が読めないリヴァイが目の前にいる。
「来い。」
右腕を掴まれたと感じた時には歩き出しているリヴァイにティアナは半ば引きずられるように着いていくしかない。
二ファは驚いた顔で見つめていたが止めることはせずに次の瞬間には笑顔で手を振っていた。
「ちょっ、リヴァイ!何処にいくの?!」
気持ちを伝えたいと決めたもののリヴァイの突然過ぎる行動が一体どういう事なのか分からず戸惑いが隠せない。
握られた腕はいつの間にか掌を握っていて、通り過ぎる人の視線が痛い。
「リヴァイ!」
どんどんと進む道は人気が少なくなって何度声をかけても返事はない。
諦めて連れられるまま、進むことにすると兵団内でも静かな区域に入る。
(この先にあるのは…)
リヴァイの心意は分からずとも段々と行き先は薄々勘づいた。
(この方向、ゲストハウス。)
何故ゲストハウスなのか、さっぱり理解出来ないまま到着するとガチャリと鍵を開け、当然のように壁外調査後のあの部屋へ入った。