第32章 規律違反
謹慎中の一人の時間はティアナは自分を見つけた。
会えないのだ。以前なら歌えないな。と思うところが
リヴァイに会えないのが寂しくて低いが落ち着いていた声が聞きたい。
自分にとって”音楽”が大切だった。
人嫌いという訳でもないが心許すのはティアナには簡単じゃなかった。それなのにリヴァイは心に住み着いている。”会いたい”それは渇きのようにティアナに感じさせた。
今日も立体機動の訓練の中、しなやかな動きが目立つリヴァイがいた。
(きれい…)
正確に巨人に見立てたハリボテの項を削いで次へと飛んでいくリヴァイ。
その動きは重力を無視したように縦横無尽に跳ぶ。
「こら、よそ見しない!」
ハンジの叱責がティアナをハッとさせた。
訓練概要説明を聞き流してしまった。
訓練場を指さしながら「もう1回言うよ、あっちの集団が終わったら、私たちの番だ。二人一組、どっちが倒した数が多いかを競う。だけど、怪我はしないこと。そんなんじゃ実戦なら真っ先に食われるからね!」
「「「はい!」」」
「はい。じゃ行こう。」
ガチャガチャと鳴る立体機動装置を腰にスタート地点に向かう。ハンジとすれ違いざまに「気が抜けてるよ」と痛いところを突かれた。
パンっと両手で頬を叩き、気合いを入れる。
緊張感を強く持って次を待つ。
「肩に力が入りすぎだ、もう少し力抜け」
アーベルが肩を叩いてアドバイスをする。
「ありがとうございます。」
せっかくのアドバイスを活かせず怪我こそしなかったものの、散々な結果だった。
「はぁ、はぁ。」息が上がって膝に手をついて呼吸を整える。
水場で水を掬って口に運ぶ。
「じゃ、今回はここまで。明日はーー」
モブリットが明日の訓練内容を軽く伝え解散。
他の兵士たちはそれぞれ軽口を叩きながら兵舎へと戻るがティアナは宿舎へと戻る道をトボトボと歩く。
ドンッ。
「っ!」
「悪ぃ。」
ボーッとしてたのか人にぶつかってしまった。
「いえ、こちらこそすみません!」
顔を上げるとぶつかった相手はリヴァイだった。
「下向いて歩いてると危ねぇぞ」
そう言ってリヴァイとの距離は開いていく。
ティアナは元から落ち込み気味な気分がさらに暗く足取りは重くなった。