第32章 規律違反
謹慎中は辛うじて訓練だけは受けられる。
しかし監視の元であり、周りには処分されたことは知れ渡り、気を遣う人、あえて明るく接する人など様々だが監視者がそれを散らす。
訓練が終わればシャワーを浴び、すぐ部屋へ戻る。
食事は運ばれ、食堂等、兵舎には立ち入り禁止。
謹慎中は洗濯物は業者へ全て任せる。普段から業者に頼む人もいるが、ほとんどの調査兵は割高な業者に頼むよりは自分でする。
食事を届けに来た二ファには申し訳ないが洗濯物も業者に出して欲しいとお願いした。
「私が洗濯するよ!」と二ファは笑顔で引き受けようとするが、丁寧に断った。
いくら友人とはいえ、あれこれと頼りすぎている。
それに(これも)謹慎の中身の一つなのだ。
部屋に戻った後は、謹慎中の反省を綴る。
それとて、直ぐに終わってしまう。
後は自室に籠り静かに過ごす。逆に言えばティアナには考え事をする時間はたっぷりある。
「はあ。」無意識にため息を吐き、巡るのはリヴァイのこと。
あの時は驚いて走り去ってしまったが、冷静になってくると色々と考える。
(リヴァイも男性だ。そういう欲求が抑えられなかった?でも欲求不満だけなら、あんな優しいキスをする?)
(それに…そもそも私の気持ちは?嫌じゃなかったのは確か。ハンジさん、クルトにも言われてたな)
謹慎期間は始まったばかり。
リヴァイは前のように抜け出してティアナに会いに行きたかったが、見回りも多くなり何よりティアナに迷惑をかける訳にもいかない。
せめて様子だけでもと悩んでいると、思いついた。
メモを渡すくらいならできるのではないか。
監視がついているティアナだが、人伝いに渡してもらうのは、どうか。リヴァイはティアナに近いが黙って引き受けてくれる可能性のある人物を思い浮かべる。
だが、普段からティアナの側にいるのはハンジ、ナナバ、メモを渡すどころか目の前で握りつぶすだろう。
二ファは頼んでも断られるか、ハンジに話してしまう可能性が高い。
「チッ」
堂々巡りの思考はリヴァイの舌打ちを引き出す。
(待つしか、ねえか…)
月夜はそれぞれの物思いを眺めながら宙に浮かんでいた。