第32章 規律違反
「あー、ここ擦りむいてるや」
シャワーを浴びるとヒリヒリと痛む二の腕を見ると血が滲んでいる。
丁寧に泡立てた石鹸で傷口を洗いシャワーをすます。
今日、着ていた兵服をランドリーボックスに入れる前にポケットを探るとカサっとした感触。
あれ?
取り出してみると二つ折りのメモが出てきた。
自分には思い当たりがなく開いてみる
[謹慎が解けたら、話したいことがある]
名前もなく誰から?と思っているとリヴァイとぶつかった記憶が出てきた。
きっと、リヴァイだ。ドクドクと心拍数があがり、何度も文字を追う。
(話したいことって?リヴァイ私も話したいことがあるんだよ)
謹慎が解けるのは、二日後。
リヴァイは始め、メモを誰かに渡してもらおうと思っていたが、よくよく考えれば自分で渡せば何の問題もない。と気がついた。普段なら直ぐにそう考えるのに確実にティアナの手に渡ることだけを、ティアナが手にし読むことだけを考えて視野が狭くなっていた自分を自嘲した。
ワザとぶつかってメモをポケットへ忍び込ませる。
なんてことないことだった。
彼女はメモに気づいただろうか。
俺からだと気づいただろうか。
その後、二人は偶然でも会うことはなかったが、あっという間に謹慎が解ける二日はたち、ハンジ班のメンバーはおかえりーと笑顔でもう謹慎になるなよ!と半分笑いながら、半分本気でティアナの背中を叩きながら迎え入れた。
「二度と謹慎は嫌です」
ティアナも戯けながら、早速ハンジの書類仕事を手伝った。
「お茶でも入れてきますね」
キリがいいところでお茶を入れる時には他の班員は研究の支度で執務室から出ておりハンジと二人になった。
雑然としたテーブルの隙間にカップを置いてハンジに差し出す。
班に寄っては業務中、班員と馴れ合う事を嫌う班もあるがハンジ班は寧ろ逆だ。
「良かったよ、本当に。おかえり、ティアナ」
謹慎前も、謹慎中もハンジはあの夜なにがあったのかは聞いてこなかった。
「ハンジさん。相談があるんです。」
「んー、何かな。相談でもなんでも聞くよ」
「私…」
言いにくそうしているティアナが話し出すのを待つハンジの瞳は優しい。
「うん。」
「私はリヴァイが好きです。」
顔を真っ赤にしながらも真っ直ぐに言葉にした。