第32章 規律違反
「…お前には関係ない」
鋭い視線を向けハンジはリヴァイを問い詰める。
「いや、関係ない。じゃない。私の部下に何をしたの」
「…」
沈黙するリヴァイに畳み掛けるようにハンジは続けていく。
「昨夜の顛末は知っているかい?ティアナが宿舎から抜け出してるのがバレた。それもティアナが狼狽えて、正面突破だ。あなたが絡んでないなんて言わせない。」
「お前には関係ないと言っている」
バチバチと視線が飛ぶがどちらも引かない。
「へえ、ティアナだけがショックを受けてペナルティも引き受けるんだ。もう一度聞くよ。リヴァイ、彼女に何をした?」
リヴァイの片眉が動く。
「アイツはどうしてる?」
「ああ、昨夜は寝付けない様子だったよ。睡眠薬でやっと眠った。ティアナの上官として、友人として言わせてもらう。関係ないって突っぱねるだけなら近づくな。」
強い口調でハンジが言い渡すと舌打ちをしたリヴァイはティアナへの感情と自分がしたことを言葉少なに話した。
「話してくれて、ありがとう。ところでティアナにあなたの気持ちも話した?」
渋い顔をしたリヴァイは言い淀んでいた。
「伝えてねえ、その前に動いちまった」
「さっき近づくな、って言ったけど伝える気はある?」
「…伝えたいがアイツは嫌がるだろうよ」
フイッと逸らした顔は苦い。
「リヴァイ、あなたは自分が傷つきたくないんだろ。思いは言葉にしなきゃ分からないよ。後のことはそれから考えればいい。」
「…謹慎はいつまでだ?」
「一週間。」
「そうか。」
一言返すとリヴァイはハンジの執務室から出ていった。
「全く。不器用と鈍感だ。」
残されたハンジはふぅ、と盛大な溜息を漏らして誰も居ない空間でポツリと呟いた。
廊下を歩くリヴァイは今すぐにティアナに会いたかった。乱暴な行為を謝りたかった、伝えたい気持ちもどんどん溢れてくる。
それに…彼女だけがペナルティを受けるのも嫌だ。
ハンジと話した際に自分もペナルティを受けに分隊長室へ行く。と言ったがこれ以上ゴタゴタさせると収まりがつかなくなるから、やめてほしい。とも言われティアナに迷惑をかける訳にもいかない。と考え直した。
ティアナに会えるまで一週間。