第31章 気付いた?
キスされて、る?
触れるだけのキスが降ってきて二度目は少し長く。
驚きのあまり瞳を閉じる事もできずにいると「こういう時は目を閉じるもんだ」角度を変え近づくリヴァイの顔が今まで見たどんな時よりも優しい。
思わず両手でリヴァイと距離を取る。
「嫌か?」
パニックだ。何が起こった?なんで?
体に廻されていた手が離れると、兎に角走った。
走って走って宿舎の正面から入って真っ直ぐに自室に籠る。その間リヴァイの優しい表情、声音が私を包んでいる。
だけど、どうして?いきなり?なんで?どうして?
やっちまった。
ティアナが嬉しそうに昔馴染みとか言うのを聞いていたら、そうしちまった。あわよくば流されてはくれないかと都合のいいことを思った。
驚きで固まってるティアナを捕まえてもう一度。
俺とは違う柔らかさ、温度。唇の感触。俺はもう一度堪能したくて距離を埋めたくてティアナの体に手を廻して。だが、ティアナに止められ、逃げられた。
一人残された、俺はまだ気持ちも何も伝えず、いきなりひどいことをしたと気付いた。
ティアナとちゃんと、ちゃんと話し合いたい、顔を見て俺の気持ちもティアナの気持ちも聞きたい。本当は、それが聞きたかったんだ。
心臓が打ち鳴らす鐘のようにドクドクドクと内側から響く。怒ってたはずなのに、どうしてあんなことを?
優しい瞳で声音で聞くの?
「ティアナ・ディーツ!ドアを開けなさい!」
無断で外出してたことはバレているから、宿舎管理担当から開けなさいとドアの向こう側から命令されている。
深呼吸して、ドアを開けた。
今夜はちゃんと自分のベッドで寝ようと本を読みながら隠し持ってきた酒瓶からグラスに注いでサイドテーブルに置いた、その時だった。荒い声が宿舎に響いている。
何事かと、ナイトガウンを羽織って廊下に出ると野次馬が出来ている。
「何があったの?」近くにいた子を捕まえて聞いてみれば無断外出がバレたらしい子が今夜の宿舎管理に絞られているらしい。
立場上、人を掻き分け責められる違反者を見ると泣きそうな顔のティアナだった。
「夜からうるさいよ、ちょっと二人ともこっちに」
兎に角野次馬の見世物にする訳にはいかない。管理室へ連れていく。
途中ナナバとアイコンタクトを取りながら。