第31章 気付いた?
「今までだって恋の曲や歌はいくつもあったでしょ?」
「いいや、今までとは違うよ。表現が豊かになってる、もしかして?」
「…」
「悩んでいるの?恋人?片思い?」
矢継ぎ早に質問を重ねるクルトはこういう話しが大好きだ。絶対にこの話題から離れない。
「わからないの。」
「何が?」
「好きなのか、どうなのかイマイチわからないの」
「ふぅん。なんでわからないのに悩んでいるのかな」
「その人との時間は大切だけど、男性として見てるのかがわからなくて…」
多分悩みすぎた私の口は軽くなっている。
「じゃあさ、その人が君に冷たくしたり、素っ気なかったりしたら、どう思う?」
「愛想のいい人じゃないから、それもわからない。ただ、会えると嬉しくは思う」
へぇーと妙な納得の声を出してクルトは続ける。
「じゃ、会えなくなったら?君以外の人に笑いかけてたら?」
正直想像しにくい。どういう時に笑顔が出るのかさえわからない。
答えられない私にクルトは困ったねと言いつつ更なる追撃をする。
「違う聞き方をしようか、相手が君じゃなくて他の人といる時間が多くなって君と合わない。それを想像してみてよ。どんな感じ?」
「……いい気分じゃない。と思う」
そこまで聞いてクルトは大笑いした。店内の視線が痛い。
「答え出てるじゃん!無自覚なの?可笑しい!」
ムッとした顔をするとクルトの笑顔が深まっていく。
「ティアナ僕が今言って、答えたことを帰ったらよく思い返したみて。簡単なことだよ。」
訳知り顔なクルトにイラッとしながらも長年の付き合いで核心にせまる事を言っていると感じた。
「わかった。アドバイスありがとう」
「アドバイスなんて大層なもんじゃないよ。ティアナが鈍感なんだ」
これ以上はクルトには言われたくなくて、強引な話題転換をする。
「おじ様はお元気でいらっしゃる?」
唐突な話題にも私の思惑にも気づいていてクルトは付き合ってくれる。
「最近お会いしたよ。元気だけど、寂しそうだった。会いには来れないしね。」
「そう、お手紙は出しているんだけど。」
「手紙じゃ不足だよ。何より君の顔が見れないからね」
クルトはカラカラ笑って兵舎近くまで送ってくれた。
リヴァイが街で私達を見掛けてたなんて知らなかった。