第30章 意識して作る”いつも通り”
いつも通りの夜が来て、いつも通りに歌を聞いて帰るのが俺達の夜だ。
歌い終わったのに帰ろうとしないティアナにどうかしたのかと振り向くと「えっと、、預かり物」差し出されたのは淡いピンクの封筒。
「茶色の緩い髪でね、可愛らしい女の子だった!受け取って!」
自分で渡せない手紙をティアナが断らねえって知って渡したのか、どうか。この手の手紙は受け取ったのは初めてではないが、どんな人間かも知らねえで嬉しがるほど馬鹿じゃねえつもりだ。
「そうか、面倒事に巻き込んで悪かった」
「はは、乙女心ってのかな?なんか初々しいね」
途端に苛立った。ティアナにか、手紙の主か。
「受け取った。後、お前は今後こういう事に関わるな」
また俺はティアナを突き放してしまう。距離感がおかしくなるのが分かってるのに、そんなのは嫌なのに。
宿舎にさっさと戻り、自室でとりあえず読むだけ読もうとしているところにゲルガーに捕まった。たまには酒でも付き合えとうるさい。こいつは酒が入ると更にうるさくなるのは知っているので断るが、強引に談話室へ連れていかれる。
そこには既に何人かが寛いでいてゲルガーの誘いを受けた男どもも飲み始めている。
若い奴らは明日、頭痛と仲良しだろうな。
自分のペースを崩さず、少しだけ付き合ったら戻る事にした俺にゲルガーは喜んでいやがる。
「イける口じゃねえか!リヴァイ!」
「静かに飲ませろ」
「酒で日頃のストレス発散できるんだ、安いもんだろうがよ!」
「で、さ。あの人なんて良いよなぁ」
「あー、なんかわかる、わかる。笑顔でさ”お疲れ様です”って年上なのに柔らかいんだよな」
「でもよ、いつも班長クラスが一緒じゃん?なかなか近づけねえよな〜」
「お前、ナナバさんが良いとか言ってたじゃん」
「高嶺の花過ぎてな〜見てるだけで満足だ」
どうやら、酔ってきた若いヤツらは気になる女の話題になってるらしい。
ゲルガーは見逃さず、どいつが誰を気にしてるのか、聞き出し始めた。
色恋沙汰なんぞ面倒なもんなのによくやる。
呆れながらも、俺も当事者だな、とティアナが寄越した手紙を思い出した。