第30章 意識して作る”いつも通り”
「リヴァイ、夜会に興味はないか?」
「ねえよ」あるはずねえだろうが。
「そうか、残念だな」
黙ってやり過ごすつもりで食事に集中する。
「誰か、夜会に出席してはくれないか?」
誰も名乗りを上げないどころかエルヴィンから視線を逸らして答えを突きつける。
「参ったな」
困ってもいない顔で順にハンジ達の顔を見る。
「今回は小規模な夜会だから気を張らずに済むんだが。」
「やめてくれよ、エルヴィン。食事中にそういう話題は出さないでくれよ」
目があったらしいハンジから抗議の声が上がる。
「ああ、済まなかった」
それで夜会の話題は終了し、また別の会話が始まる。
食べ終わったトレイを持って席を立つと、斜め前のテーブルの女と目があった。
こちらの変人どもに気を取られているんだろう。
構わず返却口へ、トレイを返し自室に足を向けた。
あの身の上話から、俺達はお互いに線を引いている。
俺は踏み込まない。ティアナは話さない事で。
それでも不満はなかったし、いつも通りだ。
「あのっ!」
突然声をかける女の子は見た事のない顔だった。
第3医療隊にいる間に入団した子かもしれない。
茶色の緩いくせ毛が可愛らしい子は手紙を持っている。多分、私より4~5歳は下。
「何かな?」
「これを、この手紙を渡して欲しいんです」
これってアレだ。ラブレターってやつ。
「ディーツ先輩は、仲良さそうなので…お願いします!」
仲良さそう。か。あまりこの手には関わりたくない。
だって第三者が入ると拗れた時、厄介な事になるし当事者同士じゃなきゃ意味無い気もする。
でも、目の前の女の子は精一杯の勇気を振り絞っているのか真っ赤で手紙を差し出す手は少し震えてる。
「いいよ、彼に渡すね。」
「ありがとうございます!」
ぺこりと頭を下げる女の子の肩をトントンと叩いて午後の任務に向かう。
無くさないように大事に手紙を胸ポケットにしまって釦をかけた。
「ティアナ、ここの数値書く欄がズレてるよ」
「あ、すみません。モブリットさん。やり直します」
「うん、気をつけて。…元気ないけど、どうかした?」
「いえ、ウッカリです。ごめんなさい。」
「なら、いいけど。」
私の様子をハンジさんが観察してたなんて、後で聞くまで知らなかった。