第30章 意識して作る”いつも通り”
大して酒に強くないヤツらはゲルガーと女の話で盛り上がっている。
ゲルガーがお前は?お前は?と聞きまくって、うるせえ。
そろそろ俺は戻ろうとしている時に何名かが出した女がティアナの名前だった。
ゲルガーは「ティアナはガード強いぞ、なんてたって、うちの班長クラスが守ってるからなあ、ナナバより難しい」と力説してやがる。
気になって、もう少しだけ酒の席に付き合おうと決めるとゲルガーがこっちに振ってきた。
「なぁ、リヴァイ、お前も騎士の一人だよなぁ」
「柄じゃねえし、騎士なんかになった覚えねえよ」
「お付き合いされてる方はいるんでしょうか!?ゲルガー先輩!」
「あー、いねえと思うが。」
オオッと何名かが喜ぶ。
余計な事を言いやがって。
「俺は戻るぞ。じゃあな。」
後ろでゲルガーや飲まれた奴らの引き止める声が聞こえるが知らねえ。
自室に戻って、テーブルに封筒を置く。
どんな女か知らねえし、その女も俺の事をよく知らねえのにな。
上っ面だけで好きだのどうだの。
面倒だし、いつもなら読むこともしない封筒だがティアナが関わってるからには、読むしかねえか。答えは決まりきっているんだがな。
封筒を開いて便箋もお揃いの若い女の好みそうな色だ。
書いてある内容も、あれこれ遠回りして最後に好きだと書かれ返事は明日の夜、兵舎の屋上で待ってる。というものだ。
はあ。溜息がこぼれる。ティアナも面倒事に付き合いやがって。お人好しにも程がある。
だから、若い男共も騒ぐんじゃねえか。
ティアナもこんな風に呼び出しされたりするんだろうか?
もし、そうなら。あいつはどう応えるだろう。
あいつに特定が出来たら?もう俺はあいつの歌を聞けねえのか?
手紙の女の呼び出しよりも、そっちが気になってしまっていた。
女子宿舎の自室から水差しに水を入れようと給湯室に行く途中であの子に鉢合わせた。友人と一緒で私の顔を見てモジモジしている。
無事に渡されたのかが、気になるんだろう。
「リヴァイ先輩は…」
「ちゃんと受け取ったよ。」
きゃあー!と喜ぶ二人。
おやすみなさい。挨拶したけど聞こえてないみたい。
そのまま水を入れた水差しをもって自室へ戻った。
リヴァイはどう返事するんだろう。
いや、私が気にしても仕方ない。