第30章 意識して作る”いつも通り”
ミケ班との訓練は通常よりもキツかった。
ハンジ班はどちらかといえば作戦立案、実験がメインの活動をしているから、戦闘が得意のミケ班との訓練は分が悪い。
「ゲルガー!」
「おうよ!」特にナナバさん、ゲルガーさんの連携は凄い。けど、こちらもハンジさん、モブリットさんの連携だって負けてない。
問題は班長のミケさん。残りのハンジ班の集中攻撃も難なく対応してしまう。
(足引っ張っちゃ駄目)
私が足を引っ張ってるのは自分でも嫌な位わかる。
午前中いっぱいの訓練を終えて自主練が必要だな、と噛み締める。訓練後の開放感でみんながワイワイと兵舎に戻っていくのを見送り木陰で休む。
「疲れたのか」
エルヴィン分隊長が覗き込むように問いかける。
直ぐに立って敬礼をしようとする私をいいから。とそのまま休ませてくれる。
「くれぐれも無茶はするな」
「はい…」力なく返事するのが精一杯。
「そういえば、あのお菓子は美味しかったかい?」
急な方向転換な言葉に素で答えてしまった。
「美味しかったです!」
「機会があったら君にあげるとしよう」
「ありがとうございます」
「エルヴィン!ティアナ!食堂行くよー」
私達を見つけたハンジさんが、ニカッといつもの笑顔で昼食に誘ってくれた。
訓練後は汗と埃を落とす為にも軽いシャワーは欠かせない。
だから、食事はいつも遅れてしまうし、抜くこともある。
今日は遅くはなったが、昼食には間に合った。トレイに食事と紅茶をのせる。
「リッヴァーイ、こっちおいでよ」
あの大声はクソメガネか。テーブルを見るとエルヴィンからミケ、勢揃いじゃねえか。
注目を集めてしまった以上仕方なしに向かうとティアナの姿もあった。
こいつら全員、以前のトラブルを忘れてんのか。
以前よりもティアナの周りにいやがる。
同じことが起きる可能性は頭にねえのか。
呑気にこっちに声をかけるクソメガネから、できるだけ遠い席について食事を摂る。
エルヴィン達が最近の様子を聞いてくるので適当に答える。
その内、接待の夜会に話題が変わった。
キースは勿論、分隊長のエルヴィンも行くらしいが俺には関係ない。
そう思って聞き流していると、エルヴィンは胡散臭い顔で俺に話しかけてきた。