第30章 意識して作る”いつも通り”
中身はなんだろ。その場で開ける訳にもいかないので思わず遠慮も忘れて受け取ってしまった。
「ありがとうございます」
「分けてもいいし独り占めしてもいいぞ」
イタズラっぽく笑うエルヴィン分隊長なんて始めてだ。
戸惑っていると「下がっていい」とやっぱり優しい
執務室は出た時と変わらずだったけど、私の手の中の箱に気づいて(気づかないわけがない)どうした?と聞いてくる。
「エルヴィン分隊長からです」簡潔に答えると「開けていい?いいよね?」とハンジさんが興奮してる。
断る理由もないので頷くと率先してハンジさんがラッピングを破る。せっかくきれいに包まれてたのに豪快だなあ。
出てきたのはシーナでも有名なお菓子店のクッキーとチョコレートの詰め合わせ。
いやでもみんなのテンションは上がっていく。
「モブリットお茶!休憩にしよう!」
ハンジさんがはしゃいでいるけど、さっきの書類のこと忘れてる、はずないよね。
「ハンジさん、計画案も通りましたよ」
「やった!お茶じゃなくて酒持ってきてっ!飲むよぉー!!祝杯だ!」
いや、いや、それはちょっと。
モブリットさんが宥めて(怒って)暫くしてから落ち着いた。
頂いたお菓子はちゃんとした休憩時間にみんなで楽しむことになり休憩までの間ハンジ班はやる気に満ちていた。
やり甲斐のある仕事が終わって一日の終わりにあの場所へと。
リヴァイは大抵早めで待っている。
「こんばんは。」
「よお。」
挨拶を交わしたら喉を解す。
そして歌う。歌い終えると明日までさよなら。
シンプルな名前のない関係。
「そういえば、今日は賑やかなもん抱えてたそうじゃねえか」
「あ〜、やっぱり目立ったよね。あの頂きものは」
「頂きもん?」
「うん。エルヴィン分隊長からのお裾分け」
瞬間、ピリッとした気がするけど、リヴァイからの返事は、そりゃ良かったな。とおかしな所はない。
偶にエルヴィン分隊長の話を出すとリヴァイは不機嫌になる。
何かあったのかもしれないけど、私は触れない。
「明日は訓練か?」
「予定はそうだよ。ハンジ班とミケ班の連携訓練。」
「ヘマすんなよ」
「大丈夫」
いつも通りの夜が終わって、後は寝るだけ。