第29章 暴こうとした罪の罰を知らぬ振り
走り込んでも息が上がらなくなったきた。
始めの頃は筋肉痛になって膝がガクガク笑ったりして新兵よりも酷かったけど、形にはなってきたと思う。
そろそろ立体機動の訓練がしたい。
「エルヴィン、何見てんの?」
窓際に立ってどこかを見てるのが気になってハンジは回り込む。外には訓練の休憩中なのか、ティアナが木に持たれていた。
「そろそろか。」
「何が??」
「体力もついてきたようだし、立体機動の訓練を始めてくれ」
「そのつもりだよ。モブリットからの報告で、そうしようと思ってたんだ。」
「…この研究の予算だが、もう少し押さえられないか?」
「えっ、押さえてそれなんだけど。」
「今の予算案では通せないな」
「そこをなんとかエルヴィンの力でさ〜」
「再提出だ、ハンジ」
不満そうに顔を膨らませて、わーかった。と言うハンジが本当にわかったのかは、わからない。
「他に用がないなら、下がれ。」
「そうする。」
難しい表情で出ていくハンジを背にしてエルヴィンは窓の外を見つめていた。
「今日から、立体機動も取り入れていこう。」
念願の立体機動訓練に心が踊る。
「ほんとに良いんですか!」
モブリットさんが、悪戯な顔でやめておくかい?というのを食い気味に頑張ります!と熱意を込めて宣言する。
「周りをちゃんと把握して!」
「アンカーの巻き取りが遅い!」
「ガスは最小限に!」
立体機動の訓練に入ってからモブリットさんの指導も厳しくなる。
それも嬉しくて耐Gベルトが締め付ける痛みも気にならない。
「モブリット、ちょっと。ティアナー、降りておいでー!」
珍しくハンジさんがきた。
降りてみるとガクガクと震えが止まらない。
「あちゃー、やり過ぎだよ。モブリット。立体機動時の風に負けちゃってる。こっち来て。」
モブリットさんに見られない角度でベルトの間の太腿を押される。
鈍い痛みがじんわりと広がる。
「浮腫も出てるね。訓練は終了。医療班の指示に従って」
申し訳なさそうなモブリットさんに大丈夫です!と答えて仕方なしに医療室へと重い足を向けた。
「2、3日は訓練不可です。休んで様子を見ましょう。なるべく体に負担がかからないようにして下さい、寝る時は足を高くして寝てくださいね。」
湿布を貼るのは良いけど車椅子だけは拒否した。